化学メーカーの「研究」の仕事内容は、新製品開発・新製法開発、技術営業、知的財産の権利化です。必要な資格は、修士号以上の学位、危険物取扱者です。必要なスキルは、コミュニケーションスキル、研究スキル、分析・評価スキルです。仕事の魅力は、最先端の科学技術に触れて自分も技術貢献できること、社会に貢献できることです。仕事の大変なところは、失敗のリスクがあることや、在宅ワークに向かないことです。社内キャリア、就職・転職情報についても紹介します。
化学メーカーで研究、生産技術、工場管理の業務をし、多くの部署と仕事をしてきました。その経験から各部署の仕事内容を紹介します。リクルーターの仕事もしています。
仕事内容概要
新製品開発・新製法開発
研究では、新しい製品を開発したり製品の新しい製法を開発したりします。論文や学会から情報収集し、アイデアを出して実験し、検証するサイクルを繰り返し、目標とする機能を持つ製品を生み出します。会社の競争力向上のために大きな期待が寄せられる部署です。
企業の研究者はコスト意識も必要です。いくら高い機能を持つ製品を開発できたとしてもコストがかかりすぎては利益が出ません。コストと機能のバランスを考えることも求められます。
研究の仕事は、合成、分析、評価、MI(マテリアルズインフォマティクス)に分けることができます。
※この記事で「評価」とは、化学系で通常使用することがない電子材料関係の電気的特性の評価を意味しています。
一人がすべての仕事をする場合もありますが、組織が大きくなるとチームを分けて役割分担することが多いです。チーム間で相互にコミュニケーションをとることが重要です。
研究の仕事は、合成、分析、評価、MIのチームで役割分担して進めることが多いよ
合成:こういう仮説で新しいサンプルを作ったよ。仮説通りになってるか分析・評価して確認してほしい。
分析:いろいろ分析してわかったけど、この不純物があると機能が低下するよ。この不純物を除去したサンプルを作って。
評価:評価するサンプルの目的がわかると適切な方法で評価できる。いつも丁寧に説明してくれてありがとう。
MI:これまでのデータから、こんなサンプルだと高い機能が出ると予想される。合成さん、つくってくれない?
こんなコミュニケーションがとれる職場だったら理想だね
技術営業
営業と一緒に顧客訪問し、開発した製品の説明をします。研究の担当者は、技術的な受け答えを正確にすることが期待されます。
知的財産の権利化
新しい製品、新しい製造方法、新しい用途を開発できたら、特許を出願して権利化します。特許関係の仕事は知的財産部の担当者と協力して進めます。
必要な資格
修士号以上の学位
有機化学、無機化学、高分子化学といった化学系だけでなく生物系や物理系、さらに最近は機械学習ができる情報電子系の人材など会社によってさまざまな人材が求められます。
危険物取扱者
化学薬品を取り扱う場合は危険物取扱者資格が必要です。資格試験の難易度は低いため、必要になってから準備しても問題ありません。
必要なスキル
コミュニケーションスキル
研究部署内(合成/分析/評価のチーム間)では、自分のアイデアを理解してもらい、目標の達成に協力してもらう必要があります。同じ研究でも化学系/物理系/生物系/情報電子系では知識背景が異なるため、お互いに説明して理解しあうことが重要です。
研究部署外に対しては、正しく成果をアピールし、計画通り進捗していること、または進捗が遅れているが挽回する対策があることを説明できる必要があります。
研究スキル
アイデアを出して実験して検証するサイクルを繰り返します。論文や学界で情報収集して質の高いアイデアを出すこと、アイデアの検証に必要な実験系を考えて実施すること、自分の仮説にこだわりすぎず適切に結果の検証をすること、このサイクルを早く回すことが大切です。
複雑な課題に対して論理的かつ創造的な問題解決能力が求められます。
研究は思い通りにいかないことも多いため、失敗しても前向きに次のアイデアを出せるメンタルを持つ人が研究に向いています。
分析・評価スキル
分析して確認したいことに対して、使用する分析装置、分析条件が適切に判断できることが必要です。分析前のサンプル調整方法でも分析結果が変わることがあるため、化学物質の性質に対する知識も要求されます。
仕事の魅力
最先端の科学技術
最先端の科学技術を取り入れ、自分のアイデアで新製品や技術を開発できます。化学の分野で専門的な知識を深めることができます。
社会貢献
新製品の開発を通じて社会に貢献できます。自分の開発した製品が販売されて世の中の役に立つ喜びを味わえます。
仕事の大変なところ
失敗のリスク
成果が出ない場合はテーマが打ち切られ、自分がやってきた仕事の価値がなくなることがあります。
自分にできることをやりきること、テーマが打ち切られた場合は、失敗を学んで次に生かすことが大切です。
在宅ワークに向かない
研究は実験や分析をするため、在宅ワークには向きません。
デスクワークをまとめてする日をつくる工夫をすれば、一部の日を在宅ワークにすることは可能です。
社内キャリア
研究に異動してくる元は、ほかのテーマの研究からが多いです。人材のローテーションや、テーマが打ち切りになった人の異動です。
研究のまま、専門を極める人や管理職として部長や研究所長などマネジメントの道を進む人もいます。
研究から異動する先は、生産技術、工場管理、製造、知的財産、営業など幅広い職種があります。研究で身につけた技術的知見が社内の各部署で必要とされるためです。
就職・転職
入社
大学新卒で生産技術に配属される人は、有機化学、無機化学、高分子化学といった化学系だけでなく生物系や物理系、情報電子系の人が多いです。就職先と同じ分野での研究経験があれば、選考時に有利に働きます。
一方で、専攻していた分野とは違う分野の仕事になることも多いです。専攻分野をひとつ増やせると前向きに考えて取り組みましょう。
理系の大学新卒の人は、まずは研究に配属されることが多いです。その後は「キャリア」の項目で説明したとおり、様々な部署に異動する場合があります。
他社から転職してくる人もいます。転職先と同じ分野での研究経験があれば、選考時に有利に働きます。
転出
研究の実務経験があれば、ほかの化学メーカーの研究への転職に有利に働きます。研究以外にも他社の品質保証、知的財産、特許事務所など様々な転職ルートがあります。
まとめ
この記事では化学メーカーの研究の仕事内容を紹介しました。
ほかの職種の仕事内容は、別の記事「化学メーカーの職種一覧」に一覧でまとめています。
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