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【半導体材料17種】半導体材料メーカー約80社の世界シェアとランキング

半導体材料 半導体関連企業

半導体産業は今後も伸び続けると予想されています。そんな半導体産業ですが、実は日本の化学メーカーは半導体の製造に使用する半導体材料で高いシェアを持っています。特に、マスクブランクスシリコンウェハースパッタターゲットフォトレジストは日本の化学メーカーが50%以上のシェアを持つ材料です。

この記事では、半導体材料の一覧と、各材料でシェアの高い化学メーカーを紹介します。

この記事はこんな人におすすめ
  • 半導体材料メーカーに興味がある人
  • 半導体材料メーカーに就職・転職したい人
  • 半導体材料メーカーに投資したい人



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半導体材料とは

半導体を製造するために使用する材料を半導体材料と呼びます。半導体の製造には数多くのプロセスがあり、半導体材料も多くの種類があります。半導体製造プロセスと、各工程で使用する半導体材料を一覧表にしました。

半導体製造プロセスや半導体産業の全体像はこの記事では書ききれないため、興味のある方は下の項目「半導体産業を知るためには」をご覧ください。

半導体プロセスと半導体材料の対応表

半導体材料と主要メーカー

半導体材料ごとに主要メーカーを紹介します。

マスクブランクス

マスクブランクスは、石英基板上に金属膜と感光膜をコーティングしたものです。 これに回路パターンを形成するとフォトマスクになります。

EUV用マスクブランクスはHOYAAGC、その他光源用のマスクブランクスはHOYA信越化学工業のシェアが高いです。

マスクブランクス
出典:HOYA

フォトマスク

フォトマスクは露光工程で使用されるパターンをマスクブランクスに形成したものです。フォトレジストにパターンを転写するための材料です。フォトマスクのパターンはクロムなどにより形成されています。さらに詳しい説明はこちら(Wikipedia)。

フォトマスクは、半導体メーカーが内製することが多く、TSMCやサムスンは基本的に自社で製造します。外販フォトマスクの中では、トッパンフォトマスクフォトロニクス大日本印刷が高いシェアを占めています。その他にも、HOYA日本フイルコンSKエレクトロニクスが知られています。半導体メーカーの中でも、ラピダスはEUVフォトマスクを内製せず外部購入する

フォトマスク
(出典:電子デバイス産業新聞)

ペリクル

ペリクルは、異物がフォトマスクの回路パターン面へ直接付着するのを防ぐために使用する保護膜です。マスクから離れた位置に異物があっても、ウエハー上では焦点を結ばないので欠陥になりません。また、傷やホコリを付きにくくする機能があり、フォトマスクの検査・交換頻度を抑制し露光工程の生産性を向上できます。

ペリクルの主要メーカーは、三井化学信越化学AGCFINE SEMITECHNEPCOS&S TechCanatuです。

三井化学は旭化成からペリクル事業を取得し、EUV露光装置メーカーのASMLからライセンスを受けて量産するなど、ペリクル事業に力を入れています。

多結晶シリコン

多結晶シリコンはシリコンウェハーをつくる原料で、高純度のケイ素です。ケイ石を還元して金属シリコンとし、金属シリコンを精製して多結晶シリコンを製造します。

金属シリコンの製造

金属シリコンの原料はケイ石です。ケイ石は二酸化ケイ素(SiO2)を主成分とする岩石の総称です。ケイ石は世界中に存在しますが、多結晶シリコンの原料としては純度の高い海外産のケイ石が用いられます。ケイ石を石炭やコークスと一緒に電気炉で還元して金属シリコンを製造します(SiO2 + C → Si + CO2)。金属シリコンの純度は98~99%です。電気炉では大量の電力を使用するため、金属シリコンは電気料金の比較的安い国(中国、ブラジル、南アフリカ、ノルウェー、アメリカなど)で製造されます。

多結晶シリコンの製造

まず、金属シリコンと塩化水素を約300℃で反応させ、トリクロロシランを製造します(Si + 3HCl → HSiCl3 + H2)。得られたトリクロロシランを蒸留精製し、純度を99.999999999%(イレブンナイン)まで高めます。高純度化したトリクロロシランを高純度水素ガスで還元し、高純度のシリコンを得ます。ただし、この還元反応を実施する大気圧・1100~1200℃の温度範囲ではトリクロロシランの熱分解反応が優先的に起こるため、収率は最大で25%となります(4HSiCl3 → 3SiCl4 + Si + 2H2)。生成した多結晶シリコンロッドを粉砕し、酸性溶液や純水などで洗浄し、純度が99.999999999%(イレブンナイン)の多結晶シリコンが得られます。

多結晶シリコンの有力企業はトクヤマで、2022年の世界シェアは20%です(出典:ちばぎん証券)。少し古い2005年のデータですが、その他メーカーの世界シェアを下に示します。

多結晶シリコン
出典:semiconportal

シリコンウェハー

シリコンウェハー(ウェーハ、ウエハとも言う)は、多結晶シリコンを原料としてCz法(Wikipedia)で製造した単結晶シリコンを、厚さ1 mm程度に切断して作られます。

シリコンウェハーは、信越化学工業SUMCOグローバルウェーハズシルトロニックSKシルトロンの5社で寡占されています。

シリコンウェハー
出典:インフォーマ

各種高純度ガス

半導体製造プロセスの各工程でさまざまな高純度ガスが使用されます。

出典:インフォーマ

高純度ガスも日本のメーカーが強いです。代表的なメーカーを紹介します。

  • ADEKA
  • SKマテリアルズ(韓国)
  • エア・ウォーター
  • エアー・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(アメリカ)
  • エア・リキード(フランス)
  • 関東電化工業
  • 住友精化
  • セントラル硝子
  • ダイキン
  • 日本酸素
  • トリケミカル研究所
  • 日本ゼオン
  • フォーサング(韓国)
  • 三井化学
  • レゾナック

エッチング工程の特殊ガスで世界シェア約5割の関東電化工業はフッ素系のエッチングガスに代わる代替品を開発しています。この代替品を使用することで、エッチング後の排ガスの排出量がCO2換算で半減すると言われています。半導体および半導体を使用する製品でカーボンニュートラルを目指す中で、シェアの維持・向上を狙った開発方針が見られます。

フッ化水素酸

フッ化水素酸はフッ化水素の水溶液です。高純度のフッ化水素酸はウエットエッチングやウエット洗浄で使用されます。半導体用の高純度フッ化水素酸も日本のメーカーが強いです。代表的なメーカーを紹介します。

  • ステラケミファ
  • 森田化学
  • ダイキン

フッ化水素は2019年に日本政府が韓国に対して輸出管理強化をしました。当時の日本メーカーのシェアは80~90%だったと言われています。

スパッタターゲット

スパッタターゲットとは、スパッタ法によって薄膜形成を行うための材料で、金属やセラミックスを加工し製造されます。

スパッタターゲットは、JX金属東ソーハネウェルエレクトロニックマテリアルズプラクスエアの4社で寡占されています。ほかにも、高純度化学研究所アルバック三井金属三菱マテリアルフルウチ化学大同特殊鋼などがあります。

スパッタターゲット
出典:インフォーマ

フォトレジスト

フォトレジストは、ポリマー(高分子)、感光性材料、溶剤を主成分とする液状の組成物で、光や電子線等によって溶解性などの物性が変化します。この性質を利用して半導体にパターン形成をします。さらに詳しい説明はこちら(Wikipedia)。

フォトレジストは、JSR東京応化工業信越化学工業住友化学富士フィルムと日本の会社で90%以上のシェアを占めています。

2023年に最大手のJSRが政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)の傘下に入りました。他社を巻き込んだ再編によって強力なフォトレジストメーカーが誕生する可能性があります。

フォトレジスト
出典:インフォーマ

フォトレジスト原料

フォトレジストは、ポリマー(高分子)感光性材料溶剤を主成分とする液状の組成物です。それぞれの主要メーカーを紹介します。

半導体材料の中のフォトレジストだけでも、フォトレジストメーカー、フォトレジストの原料のポリマー(高分子)、感光性材料、溶剤メーカー、さらにその原料の化学メーカーとすそ野が広く関係会社が多い産業構造になっています。

ポリマー(高分子)およびその原料モノマー

  • DIC
  • 旭有機材
  • 大阪有機化学工業
  • 群栄化学工業
  • 住友ベークライト
  • ダイセル
  • ダイトーケミックス
  • 田岡化学工業
  • 東洋合成工業
  • 日本曹達
  • 富士フィルム
  • 三井化学
  • 三菱ケミカル

感光性材料

  • ADEKA
  • 東京化成工業
  • 東洋合成工業
  • ダイトーケミックス

溶剤

  • KHネオケム
  • 神港有機化学工業
  • ダイセル
  • 東洋合成工業
  • レゾナック

トップコート材料

半導体の中のArF液浸露光タイプのみで使用される材料で、アルカリ可溶性ポリマーとアルコール溶剤の組成物です。さらに詳しい説明はこちら(JSR)。

トップコート材料はJSRが世界シェアNo.1です(出典:JSR)。

CMPスラリー

CMPは、Chemical Mechanical Polishingの略です。CMPスラリーは、溶剤中にナノサイズの研磨粉を分散させた組成物で、ウェハー表面を化学的に溶解させながら機械的に研磨するために使用されます。

CMPスラリーの大手はインテグリスです。インテグリスは、CMPスラリー、CMPパッド、CMP後洗浄薬液までCMPのトータルソリューションビジネスを展開しています。

日本メーカーの中では富士フィルムフジミレゾナックJSRのシェアが大きいです。その他にも、BASFトッパンインフォメディアエアープロダクツアンドケミカルズなどがあります。

CMPスラリー
(出典:電子デバイス産業新聞)

極薄銅箔

三井金属はパッケージ基板向けで微細回路形成に必要な極薄銅箔(製品名:マイクロシン)でほぼ100%の世界シェアを持っています。極薄銅箔はハイエンド半導体向けの材料です。

銅表面処理剤

メックはパッケージ基板向けの銅表面処理剤でほぼ100%の世界シェアを持っています。パッケージ基板の大型化や多層化により売り上げの拡大が見込まれています。

絶縁材料

味の素はパッケージ基板で必須の絶縁材料(製品名:ABF、味の素ビルドアップフィルム)でほぼ100%の世界シェアを持っています。ABFは半導体パッケージ基板の大型化、複雑化によって継続的な需要拡大が見込まれています。

ガラスクロス用ガラス繊維

日東紡はプリント配線基板や半導体パッケージ基板の材料となるガラスクロス用ガラス繊維を製造しています。日東紡の製品は強度や熱膨張耐久性に優れており、ハイエンド半導体向けではほぼ100%の世界シェアを持っています。

封止材(モールド樹脂)

封止材は、熱硬化性のエポキシ樹脂にシリカ微粒子を分散させた組成物です。半導体チップを光、熱、湿気、ほこり、衝撃から保護する目的で使用されます。最大手は住友ベークライトで、世界シェアは約40%です(出典:住友ベークライト)。住友ベークライトは焼却する際にダイオキシンを発生させないよう、非ハロゲン系封止材を開発してシェアを伸ばしてきました。住友ベークライトでは使用時のCO2排出量を30%減らせる新材料を開発中で、環境配慮型の材料でさらにシェアを伸ばしたい考えです。

その他にも、レゾナック信越化学日本化薬などが知られています。

超純水

半導体製造の洗浄用に超純水は欠かせません。超純水の製造企業としては、栗田工業オルガノ野村マイクロサイエンスなどが知られています。

半導体材料の市場規模と将来の見通し

SEMIによると2022年の半導体材料市場は727億ドルで(出典:SEMI)、これは半導体市場の13%になります。

半導体の市場規模は2022年で5741億ドル(出典:世界半導体市場統計)、その後は年平均成長率8.7%で成長すると予想されています(出典:Vantage)。半導体市場の成長にともなって半導体材料も成長を続けることが予想されます。

半導体市場規模
世界半導体市場統計およびVantageより著者作成

半導体材料メーカーは、将来性ランキングでも高い順位をつけていました。

まとめ:日本の化学メーカーが強い

この記事では、半導体製造プロセスの各工程に使用される半導体材料とその主要な半導体材料メーカー約60社を紹介しました。

日本の化学メーカーが高い技術力を生かしてシェアを取っていました。特に、マスクブランクスシリコンウェハースパッタターゲットフォトレジストは日本の化学メーカーが50%以上のシェアでした。

ねこ
ねこ

複数の材料で高いシェアを持っている会社があったね

けむさん
けむさん

複数の材料で高いシェアを持っていると、半導体メーカーで使用するときに最適な組み合わせになるように自社で事前に検討できるから、材料開発が有利になるよ



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