
化学メーカーってどんな仕事があるの?

化学メーカーの現役社員が説明するよ
化学メーカーというと、「研究者」や「工場で製品をつくる仕事」をイメージする人が多いかもしれません。
しかし、実際には研究開発だけでなく、生産技術、品質保証、設備、製造、営業、購買、知的財産、経理、人事など、非常に多くの職種があります。
化学メーカーだからといって、化学系の専攻者だけが働いているわけではありません。
化学・化学工学系はもちろん、機械、電気・電子、情報、物理、生物、土木・建築系など、さまざまな専門分野の人が活躍しています。さらに、営業、経理、人事、法務など、文系出身者が活躍する仕事も数多くあります。
この記事では、化学メーカーの職種を大きく分類し、それぞれの仕事内容を一覧表で紹介します。
化学メーカーの仕事一覧
化学メーカーの職種は、大きく次の5つに分けると理解しやすくなります。
| 分類 | 主な職種 | 主な仕事内容 |
| 研究 | 研究 | 新製品・新製法の開発 |
| 研究 | 生産技術 | 製造プロセスの開発・改良 |
| 工場 | 品質保証・品質管理 | 製品の品質管理・保証 |
| 工場 | 工務・エンジニアリング | 工場・設備の設計、保全 |
| 工場 | 工場管理 | 生産計画、工場運営 |
| 工場 | 製造 | 工場での製品製造 |
| 工場 | 環境・安全 | 環境保全、安全管理 |
| 本社 | 知的財産 | 特許、知財戦略 |
| 本社 | 営業 | 顧客への製品販売、顧客対応 |
| 本社 | 経営企画 | 事業戦略、予算管理 |
| 本社 | 購買・調達 | 原料・資材の調達 |
| 本社 | 法務 | 契約、法律上の問題への対応 |
| 本社 | 経理 | 決算、財務管理 |
| 本社 | 総務 | 社内施設・制度などの管理 |
| 本社 | 人事 | 採用、教育、評価 |
※会社によって部署名や担当する仕事内容は異なります。
文系出身者は本社の業務、理系出身者は研究や工場で仕事をすることが多いです。理系出身者が本社で仕事をするケースもあります。

理系
理系出身者の大学時代の専攻と業務の関係は、おおむね以下の対比表のようになります。
有機化化学、無機化学、高分子化学、計算化学、化学工学といった化学系はもちろん、生物系、物理系の人も研究の仕事をするために募集されています。
化学メーカーだからといって化学専攻の人だけが入社するわけではありません。化学メーカーには工場の設備に関わる仕事もありますので、機械系、電気系、電子系、制御系、土木建築系の人たちも募集しています。
(出典)三井化学採用ホームページ
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/career/work/occupations.htm
文系
化学メーカーに入社する文系の人は、経営企画、購買、法務、経理、総務、人事、知財、営業などの仕事をします。化学メーカーは研究や工場での製造をイメージするかもしれませんが、それだけで会社は成り立ちません。文系の人も化学メーカー出活躍する機会は大いにあります。
化学メーカーの15種類の職種と仕事内容
研究の仕事
化学メーカーらしい仕事としてまず思い浮かぶのが、研究開発や生産技術などの技術系職種です。
主な仕事内容は、
- 新製品の研究開発
- 製品の性能評価・分析
- 顧客の要求に応じた製品改良
- 営業への技術的サポート(営業とともに顧客に説明しに行くこともあります)
- 研究成果の特許出願
などです。
化学メーカーの研究では、単に実験をするだけではありません。
「どのような製品が市場で求められているのか」「どのような性能を持たせれば顧客に買ってもらえるのか」「利益を最大化するためにはどのような化合物を製品化するべきか」といったことを考えながら研究を進めます。
単に新しいものをつくればいいというわけではありません。会社の利益になるものをつくる必要があり、企業研究者には利益を意識することが求められます。会社の競争力向上のために大きな期待が寄せられる部署です。
研究開発では、化学系だけでなく、生物、物理、材料などさまざまな専門分野の人材が活躍しています。
生産技術の仕事
生産技術は、研究所などで開発された製品を、実際の工場で製造できるようにする仕事です。
主な仕事内容は、
- 工場での製造プロセス・製造条件の設計(研究と製造の橋渡しをする仕事です)
- スケールアップ
- 生産効率・生産能力の向上
- コストダウン
- 工場への製造技術の導入
- 新しい製造方法の開発
- 研究成果の特許出願
などです。
研究室では数百mLや数Lのスケールでうまくいっても、そのまま工場で大量生産できるとは限りません。
そこで、生産技術が研究と工場の間に入り、「研究室でつくれる」から「工場で大量につくれる」へ橋渡しする役割を担います。
品質保証(品質管理)の仕事
化学メーカーでは、「製品をつくる」だけではなく、安全で一定の品質の製品を安定して提供することも重要です。品質保証・品質管理は、製品が決められた品質を満たしていることを確認し、顧客に保証する仕事です。
主な仕事内容は、
- 製品の品質管理
- 製品規格の設定
- 製品の分析・検査
- 原料の品質管理
- 品質保証に関する文書作成
- 顧客からの品質に関する問い合わせへの対応
- 品質問題の原因調査・改善
などです。
化学メーカーでは、製品の品質が少し変わるだけでも、その製品を使用した顧客で思わぬトラブルが発生することがあります。
そのため、品質保証・品質管理は、製品を安心して使ってもらうための重要な役割を担っています。
品質保証の仕事では、統計学や分析化学の知識が必要です。また、品質管理検定を取ることも推奨されています。
製品が品質保証規格を満たしているかどうか、製品を出荷してよいかどうか、最終決定するのが品質保証部です。そのプレッシャーは大きいです。そのプレッシャーに影響されずに、良品/不良品を適切に判断する必要があります。
このようにプレッシャーがかかるのは、品質保証部に決定する権限があるためです。適切に決断できる品質保証部は関係者全員に頼られるようになります。
工務・エンジニアリングの仕事
工務部やエンジニアリング部門は、化学工場の設備を支える仕事です。
主な仕事内容は、
- 工場・設備の設計
- 新規設備の導入
- 設備のメンテナンス
- 定期修理
- 設備トラブルへの対応
- 設備の改良
などです。
化学工場では、反応器、ポンプ、配管、タンク、熱交換器など、さまざまな設備が使われています。そのため、化学系だけでなく、機械、電気、制御、土木・建築などの専門知識を持つ人も活躍できます。
化学メーカーの製造設備は数年に一回、大規模メンテナンスである定期修理を行います。工務部は、定期修理を計画し実行します。自社の工務部だけでできないことは、社外の建設会社、設備メーカーと協力して実行します。
また、新規設備導入の際は製造部から工場や設備の設計思想を聞き取り、これをもとに工場や設備の設計をします。設備能力、安全性、自動化、操作性、メンテナンス性を考慮して設計します。設計した工場や設備を建設会社、設備メーカーと協力して導入します。
工場の設備は不具合を起こすことがあります。しかし工場は24時間365日稼働するもので、時間をかけずに修理して稼働を再開させなければなりません。突発的な不具合に対して迅速かつ適切な対策が求められます。
工場管理の仕事
工場管理は、工場全体が効率よく稼働するように管理する仕事です。
主な仕事内容は、
- 生産計画の作成
- 製造量の調整
- 新工場建設や新設備導入などの長期計画
- 原料や製品の在庫管理
- 製造トラブルへの対応
- 設備トラブルへの対応
- 各部署との調整
などです。
営業から得た販売予測などをもとに、「いつ、どの製品を、どれだけ製造するか」を考えることも重要な仕事です。
工場の長期計画を策定したり工場建設や設備導入したりする際には、営業、購買、製造、工務、経理、研究、生産技術、品質保証など多くの部署の協力を得て進めます。そのためプロジェクトマネジメントスキル、リーダーシップスキルが必要です。
多様な部署とかかわるため、多様な知識が求められます。
製造の仕事
製造部は、工場で実際に製品を製造する仕事です。
主な仕事内容は、
- 製造現場での原料仕込み、設備操作、製品取り出し(オペレーター)
- 製造現場の改善(オペレーター)
- 作業手順の作成(監督職)
- オペレーターの教育(監督職)
- 製造工程の監視(監督職)
などです。
製造部は、工場で製品を製造します。工場の現場で原料を仕込んだり設備を制御したり製品を取り出したりするオペレーターと、オペレーターを監督する監督職がいます。安全第一を徹底して仕事をします。
安全、高効率、高品質な製品を製造することを目標に、現場の作業環境や作業方法を改善することも仕事です。
製造の仕事では、設備やプロセスに関する理解が必要です。また、トラブル発生時に即座に対処し、効果的な解決策を見つける能力も求められます。
何年も同じ製品を製造し続けている工場であっても、生産効率向上に終わりはありません。工場は製造スケールが大きいため、収率を数パーセント上げると年間の利益を億単位で上げることもできる、やりがいのある仕事です。
環境安全の仕事
化学メーカーでは、化学物質を扱うため、環境や安全を管理する仕事も重要です。
主な仕事内容は、
- 工場の安全管理
- 労働災害の防止
- 化学物質の管理
- 排水・排ガスなどの環境管理
- 安全教育
- 防災訓練
- 環境保全活動
などです。
「安全に工場を運転できる状態をつくる」「環境への影響を最小限にする」という、化学メーカーの事業を支える重要な仕事です。
知的財産の仕事
知的財産部は、会社の技術や発明を知的財産として守り、事業に活用する仕事です。
主な仕事内容は、
- 特許出願
- 特許権の取得・管理
- 他社特許の調査
- 知財戦略の策定
- 特許ポートフォリオの管理
- 特許侵害への対応
などです。
化学メーカーでは、新製品だけでなく、新しい製造方法や新しい用途なども重要な知的財産になります。
そのため、研究開発部門などと連携しながら、会社の技術を権利として守ります。
一般的な特許出願のフローは以下のように進めます。
- 発明:研究から発明内容を聞き取ります
- 先行技術調査:発明の特徴から先行技術の有無を調査します
- 特許性判断:先行技術と比較して権利化できる可能性の有無を判断します
- 出願方針決定:特許の重要性と出願コストを考慮して出願の要否を決めます
- 明細書作成:出願する請求項と明細書を作成します
- 特許出願
- 審査請求:出願の日から3年以内に審査請求の要否を判断して審査請求します
- 指令応答:特許庁から拒絶理由通知が届いたら反論または明細書を修正して対応します
- 特許査定:特許庁から査定を受け、特許料を納付すると特許権が発生します
※5,6,8の業務は、特許事務所に依頼する場合もあります。
事業戦略をもとに知財戦略を策定し、自社に有利な知的財産状況をつくり出します。そのために、他社を牽制する攻撃的な特許や、自社技術を保護する守備的な特許を組み合わせて出願します。例えば、他社特許の抜けている部分の権利化を狙った出願、他社が今後開発しそうな技術の先回り出願、自社技術をもれなく守る出願をします。
自社の特許をまとめて整理したものを特許ポートフォリオと呼びます。特許査定後の特許は毎年維持費用がかかるため、定期的に維持要否の検討もします。
他社が自社特許の権利を侵害している場合は、法的手段をとって争います。逆に他社から権利侵害を疑われた場合は、自社の実施技術が他社特許の権利範囲外であることを証明したり、他社の特許が無効であることを主張したりします。クロスライセンスできる特許を提供して和解することもできます。
必須ではありませんが、仕事をしながら取得を目指すといいでしょう。知財業務に必要な知識と弁理士試験の内容は一致します。弁理士資格があると社内外からの信用が高くなります。
営業の仕事
化学メーカーの営業は、単に製品を販売するだけではありません。
主な仕事内容は、
- 新規顧客の開拓
- 既存顧客への販売
- 顧客ニーズの把握
- 製品の提案
- 納期・数量の調整
- 顧客の要望を研究・製造部門へ伝える
などです。
化学メーカーでは、顧客の技術担当者と研究者・技術者が直接やり取りすることもあります。
そのため、営業職でも化学製品についての技術的な知識が求められる場合があります。
経営企画の仕事
会社や事業の将来を考える仕事です。
- 事業戦略の策定
- 市場・業界分析
- 中長期計画の策定
- 予算策定
- 経営層への情報提供
などを行います。
社長や役員の手足となって働く仕事です。将来出世しやすい部署です。
購買・調達の仕事
購買・調達は、製品をつくるために必要な原料や資材を調達する仕事です。
主な仕事内容は、
- 原料メーカーの選定
- 原料の購入
- 価格交渉
- 契約交渉
- 原料の在庫管理
- 安定調達のためのリスク管理
などです。
化学メーカーにとって原料の安定調達は非常に重要です。
原料が手に入らなければ工場を動かせないため、価格だけでなく、供給安定性や品質なども考えて調達先を決めます。
法務の仕事
会社の法律に関する仕事です。
- 契約書の作成・確認
- 法律上の問題への対応
- 法的リスクの管理
- 社内への法務アドバイス
などを行います。
経理の仕事
会社のお金に関する仕事です。
- 決算
- 財務諸表の作成
- 予算管理
- 投資判断のための経済性計算
- 財務状況の分析
などを行います。
総務の仕事
会社を円滑に運営するためのさまざまな業務を担当します。
- オフィス・施設管理
- 社内規程の管理
- 社内イベント
- 株主総会などの運営
- 社内環境の整備
などがあります。
人事の仕事
社員に関する仕事を担当します。
- 採用
- 人員配置
- 研修
- 人材育成
- 人事評価
- 労務管理
などが主な仕事です。
化学メーカーの仕事を「モノづくりの流れ」で見る
職種を個別に覚えるよりも、1つの製品が生まれて顧客に届くまでの流れで考えると、それぞれの仕事の関係が分かりやすくなります。
- 研究開発
「どんな製品をつくるか」を研究する - 生産技術
「どうやって工場でつくるか」を考える - 工務・エンジニアリング
「どんな設備でつくるか」を設計・整備する - 製造・工場管理
実際に工場で製品をつくる - 品質保証
製品が要求された品質を満たしているか確認する - 営業
顧客に製品を提案・販売する - 購買
製造に必要な原料を安定して調達する
そして、これらの仕事を、
知的財産・環境安全・経営企画・法務・経理・総務・人事
などの部門が支えています。
このように考えると、化学メーカーは「研究者だけで製品をつくっている会社」ではなく、多くの職種が連携して製品を世の中に送り出している会社だと分かります。
まとめ
化学メーカーには、研究開発だけでなく、さまざまな職種があります。
大きく分類すると、以下の表で整理できます。

化学メーカーは「化学を研究する会社」というイメージだけではなく、研究、製造、設備、品質、営業、調達、管理など、多くの職種が協力して事業を行っている会社です。
そのため、化学系の学生だけでなく、化学工学、機械、電気、物理、生物、情報などの理系学生や、営業、経理、法務、人事などを目指す文系学生にも、多くの活躍の場があります。
化学メーカーへの就職を考える場合は、「化学メーカーに入りたい」だけでなく、「化学メーカーの中で、どの仕事をしたいのか」まで考えておくことが重要です。
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