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わかりやすい安衛法(化学物質関係)の概要と、化学メーカーによる安衛法への対応

化学物質管理 化学メーカーの仕事内容
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「労働安全衛生法」(労安法)とは、労働者の健康・安全の確保や快適な職場環境形成の促進を目的する法律です。

この記事では労安法中の化学物質管理に関する部分を説明し、化学メーカーで実施している労安法への対応を紹介します。

安衛法中の化学物質管理に関する条文

安衛法中の化学物質管理に関する条文の概要を示します。

  • 第五十五条 労働者に重度の健康障害を生ずる物は、製造・輸入を禁止する。
  • 第五十六条 労働者に重度の健康障害を生ずるおそれのある物は、製造・輸入する前に厚生労働大臣の許可を受けなければならない。
  • 第五十七条 労働者に危険若しくは健康障害を生ずるおそれのある物を譲渡・提供する場合は、定められた事項を表示し、文書を交付しなければならない。
  • 第五十七条の二 通知対象物を譲渡・提供する場合は、文書を交付し、定められた事項を通知しなければならない。
  • 第五十七条の三 表示・通知対象物に対して危険性又は有害性等を調査しなければならない。
  • 第五十七条の四 新規化学物質を製造・輸入する場合は、有害性の調査を行い、当該新規化学物質の名称、有害性の調査の結果その他の事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
  • 第五十七条の五 厚生労働大臣は、がんその他の重度の健康障害を労働者に生ずるおそれのある化学物質について、製造・輸入する事業者に対し、有害性の調査と報告を指示することができる。
  • 第六十五条 有害な業務を行う屋内作業場その他の作業場で、必要な作業環境測定を行い、及びその結果を記録しなければならない。
  • 第六十五条の二 作業環境測定の結果の評価に基づいて、労働者の健康を保持するため必要があると認められるときは、施設又は設備の設置又は整備、健康診断の実施その他の適切な措置を講じなければならない。

(出典:労働安全衛生法(e-Gov)をもとに著者作成)

安衛法の体系と改正

厚生労働省によると、化学物質による労働災害は年間約450件発生しており、化学物質に関連したがんなどの疾患も増加しています。この問題に対処するため、2023年4月、2024年4月に安衛法の「新たな化学物質規制」が施行されます。新しい規制の目的は、事業者が自己のリスクアセスメントを行い、ばく露を防止するための措置を講じることです。これにより、従来の国によるリスク評価と規制の方式から事業者による自主的な管理が重視されるように変わります。具体的には、ラベル表示やSDS交付、ばく露濃度の管理などが義務付けられ、リスクアセスメント結果に基づくばく露低減措置や健康診断が追加され、全業種での安全衛生教育が必須となります。

安衛法の新たな化学物質規制
(出典:厚生労働省 安衛法の新たな化学物質規制

安衛法の分類

分類・規制化学物質の例
製造・輸入の禁止
(法第55条物質)
黄りんマツチ
ベンジジン
4-アミノジフエニル
石綿
4-ニトロジフエニル
ビス(クロロメチル)エーテル
ベータ-ナフチルアミン
ベンゼンを含有するゴムのり
製造・輸入に許可が必要な物質
(法第56条物質)
ジクロルベンジジン
アルフア-ナフチルアミン
塩素化ビフエニル(PCB)
オルト-トリジン
ジアニシジン
ベリリウム
ベンゾトリクロリド
けむさん
けむさん

普段自分が使用している化学物質がどの分類に該当するのか調べてみるといいと思います。

安衛法届出要否判定フロー

安衛法届出要否判定フロー
(出典:厚生労働省 労働安全衛生法に基づく新規化学物質関連手続きの方法 をもとに著者作成)

安衛法における「化学物質」の定義は、「元素および化合物」で、化審法における化学物質の定義より広い範囲です。安衛法の目的が労働者の安全を確保することに対し、化審法の目的が人や動植物に悪影響のある化学物質による環境の汚染を防止することであり、目的が違うため化学物質の定義が違っていると考えられます。

安衛法における化学物質・元素及び化合物
化審法における化学物質・元素又は化合物に化学反応を起こさせることにより得られる化合物
・元素、合金、生物、生体反応によって生成する化学物質は範囲対象外

化学物質が安衛法における新規物質か既存物質かを調査・検索する場合、厚生労働省の職場のあんぜんサイトを利用すると便利です。化学物質名、CAS番号などを使って検索することができます。

新規化学物質として届け出られた化学物質は1年以内に官報告示の類別整理番号が付与されて公示され(特許出願がされている場合は、特許出願公開後)、その後は既存化学物質として扱われます。

安衛法で新規化学物質の届出が免除される条件

既存化学物質は届出が免除されます。

元素一種類の原子からなる物質で単体を含むもの。
天然に産出される化学物質天然に存在する化学物質及び動植物から得られる一次産品であって分離精製が行われていないもの。
放射性物質電離放射線障害防止規則第2条第2項の放射性物質。
公表化学物質昭和54年6月29日までに製造・輸入された化学物質。
公表された新規化学物質新規化学物質の届出等を受けて官報で名称等を公表された化学物質。
既存化学物質扱いとなる特定の化学物質既存化学物質のみから構成される特定の化合物。例えば、分子間化合物、ブロック重合物及びグラフト重合物。
既存化学物質扱いとなる特定の高分子化合物・既存の化学物質である単量体から構成され、数平均分子量が2,000以上で、さらに特定の条件を満たす高分子化合物。
・2種類以上の単量体等から得られる有機高分子化合物であって、その重量割合の合計が99%を超える単量体等から得られる別の有機高分子化合物が既存の化学物質である場合。(99%ルール)
・2種類以上の単量体等から得られる有機高分子化合物であって、その重量割合の合計が98%を超える単量体等から得られる別の有機高分子化合物が既存の化学物質であり、残り2%未満の重量割合を占める単量体等が既存の化学物質であって、さらに特定の条件を満たす場合。(98%ルール)
(出典:厚生労働省 既存化学物質

その他、以下の場合は新規化学物質の届出が免除されます。

新規化学物質の届出が免除される条件根拠
試験研究のために製造・輸入する新規化学物質昭和54年3月23日付け基発第132号
一定の要件に該当する輸入品一般消費者の生活の用に供される製品労働安全衛生規則第34条の13
機械に密封されている場合昭和54年3月23日付け基発第132号
サンプル昭和54年3月23日付け基発第132号
・合金
・固有の使用形状を有するもの
・混合物のうち、混合することによってのみ製品となるもの
昭和53年2月10日付け基発第77号
確認申請をする場合 

安衛法の届出の種類

化学物質が非ばく露物質であれば厚生労働大臣あて確認申請、取り扱う数量が100kg未満であれば少量新規化学物質確認申請、どちらにも該当しなければ新規化学物質の届出をします。

手続きの種類手続き製造・輸入数量上限提出資料
新規化学物質届出届出→判定なしAmes試験結果
少量新規化学物質確認申請申出→確認100kg
厚生労働大臣あて確認申請申出→確認

安衛法への対応に関係する部署

化学メーカーの中で安衛法対応に関係する部署は、主に研究生産技術工場管理製造部です。

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