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鈴木-宮浦カップリングの「ホウ素化合物」の種類と特徴

反応
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鈴木-宮浦カップリングにはいろいろな種類のホウ素化合物を使用することができます。ホウ素化合物の種類と特徴について知れば、スムーズに合成できるようになります。

この記事では、ホウ素化合物の種類、「ボロン酸、ボロン酸エステル」、「ボラン」、「改良型ボロン酸エステル」の特徴を紹介します。ホウ素化合物を使い分けることで、みなさんの合成の役に立てばうれしいです。

けむさん
けむさん

鈴木-宮浦カップリングについては他にも記事を書いていますので、ぜひご覧ください

ホウ素化合物の種類

鈴木-宮浦カップリングに使用するホウ素化合物は大きく分けて3種類あります。

  • ボロン酸、ボロン酸エステル ホウ素原子(B)に炭素原子(C)がひとつ、OHまたはORがふたつ結合した化合物。一般式は、R-B(OR)2
  • ボラン ホウ素原子(B)に炭素原子(C)がみっつ結合した化合物。一般式は、BR3
  • 改良型ボロン酸エステル ホウ素原子(B)に4原子が配位または結合してホウ素原子(B)の空軌道がふさがれている化合物。
ホウ素化合物

ホウ素化合物の安定性は、以下の順で右に行くほど安定です。

ボラン < ボロン酸、ボロン酸エステル < 改良型ボロン酸エステル

ボランは空気酸化されやすく不安定です。

ホウ素原子に電子供与するほどホウ素原子のルイス酸性が下がり安定性が向上します。ボロン酸はホウ素原子と結合する酸素原子から電子供与されて安定性が向上しています。

改良型ボロン酸エステルはホウ素原子の空軌道にもうひとつの原子が配位または結合して空軌道をふさいでさらに安定性を向上させています。

ボロン酸、ボロン酸エステル

ボロン酸やピナコールボロン酸エステルは試薬として購入できる種類が多いため、一般的に鈴木-宮浦カップリングをする場合はボロン酸、ボロン酸エステルを使用することが多いです。

単純に合成するだけならあまり気にしなくていいですが、ボロン酸、ボロン酸エステルの種類によって反応速度が変わることも知っておくといいでしょう。右に行くほど反応速度が速くなります。

ボロン酸 B(OH)2 < カテコールボロン酸エステル Catechol boronic ester < ボロン酸エステル B(OR)2

トランスメタル化の複数のステップのうち、カテコールエステルが有利な工程や、アルキルエステルが有利な工程があるためです。

Denmarkは鈴木-宮浦カップリングで律速工程になることが多いトランスメタル化において、ボロン酸の種類が反応速度に与える影響を調べています。

ボロン酸エステルの反応速度
Andy A. Thomas, Andrew F. Zahrt, Connor P. Delaney, and Scott E. Denmark J. Am. Chem. Soc, 2018, 140, 4401

ボラン

ボランは空気酸化されやすく不安定なため、合成する際に使用する機会は少ないです。ボランの実用的な使用方法は、9-BBNを利用した合成です。9-BBNはホウ素原子に1級炭素がひとつ、2級炭素がふたつ結合しています。単純に考えるとどの炭素がカップリングに使用されるかわからないと思うかもしれませんが、1級炭素が選択的にカップリング反応します。

この理由を説明しているのが、鈴木と宮浦によるボランの反応選択性についての論文です。トリアルキルボランのトランスメタル化は1級>>2級であり、1級アルキル基が選択的にクロスカップリングすることがわかります。

ボラン
N. Miyaura, T. Ishiyama, H. Sasaki, M. Ishikawa, M. Sato and A. Suzuki, J. Am. Chem. Soc., 1989, 111, 314–321.

9-BBNを利用した反応は、別の記事「クロスカップリング反応を利用した合成方法の選び方」でも紹介しています。

改良型ボロン酸エステル

ボロン酸MIDAエステル

MIDAはN-メチルイミノ二酢酸の略称です。

ボロン酸MIDAエステルは安定なホウ素化合物で、カラムクロマトグラフィで精製できるほど安定です。無水クロスカップリング条件にも不活性なため、通常のボロン酸エステルとボロン酸MIDAエステルを持つ化合物を無水クロスカップリングさせると、通常のボロン酸エステルのみで反応させるといった使い方もできます。

ボロン酸MIDAエステルを鈴木-宮浦カップリングに利用するには、塩基性水溶液で脱保護しながら反応させます。ボロン酸MIDAエステルは系中でゆっくりと活性種(鈴木-宮浦カップリングのトランスメタル化に活性なボロン酸エステル)に変換し、活性種は素早く反応に使用されます。

この性質を利用して、ボロン酸エステルにすると不安定なフランのような複素芳香族化合物を安定なボロン酸MIDAエステルにして、収率よく鈴木-宮浦カップリングさせることができます。

フランMIDAエステル

ボロネートエステル

ボロネートエステルはボロン酸MIDAエステル同様安定なボロン酸エステルです。ボロネートエステルは塩基なしでクロスカップリングする特徴もあります。

ボロネートの反応

まとめ

この記事では、ホウ素化合物の種類、「ボロン酸、ボロン酸エステル」の反応速度の違い、「ボラン」の反応性、「改良型ボロン酸エステル」の特徴を紹介しました。

クロスカップリング反応のまとめ記事です。

関連書籍

クロスカップリング反応は、日本の学術研究者が率先して発展させた反応技術で、産業界でも活発に利用されています。例えば有機ファイン製品(医薬、電子材料等)の合成手法として、急速に普及しており、現在、欠かせない技術となっています。本書では基礎と応用を分かり易く紹介。監修者はノーベル化学賞受賞者の鈴木章博士。

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