半導体産業は2030年には2020年の倍の規模に成長すると言われています。
この記事では、製造プロセスの各工程に使用される半導体製造装置27種とその主要メーカーのべ約90社を紹介します。
日本企業が大きなシェアを持つ装置がある一方で、市場規模が大きな装置はアメリカ企業やオランダ企業のシェアが高くなっていました。日本のメーカーシェアが50%を超える製造装置は、マスク検査装置、バッチ式洗浄装置、枚葉式洗浄装置、コータ・デベロッパ、測長SEM、プロービング装置、ダイシング装置、モールディング装置、テスター、搬送装置です。
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半導体製造装置とは
半導体を製造するために使用する製造装置を半導体製造装置と呼びます。半導体の製造には数多くのプロセスがあり、半導体製造装置も多くの種類があります。半導体製造プロセスと、各工程で使用する半導体製造装置を一覧表にしました。
半導体製造プロセスや半導体産業の全体像はこの記事では書ききれないため、興味のある方は下の項目「半導体産業を知るためには」をご覧ください。
半導体製造装置と主要メーカー
半導体製造装置全体でみると、ASML、Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、KLAの5社が大手です。トップ5社と比べると6位以下の売り上げは小さく差があります。ASLMは最先端のEUV露光装置市場を独占しており、シェアを高めています。
次は半導体製造装置ごとに主要メーカーを紹介します。日本企業が大きなシェアを持つ装置がある一方で、市場規模が大きな装置はアメリカ企業やオランダ企業のシェアが高くなっています。
マスク描画装置
マスク描画装置は、透明なガラス板の表面に設計した回路パターンを描くための装置です。
IMS nano fabrication、ニューフレアテクノロジー、Vistec、日本電子の4社で寡占しています。IMSはIntelの子会社です。マイクロニックもマスク描画装置を製造しています。
マスク検査装置
マスク描画装置は、日本のレーザーテックが50%を超えるシェアを持っています。これにApplied Materials、KLA、ニューフレアテクノロジーが続きます。特にレーザーテックはEUV用マスク検査装置ではシェア100%です。
ワイヤーソー装置
ワイヤーソーはシリコンインゴットを切断するための装置です。主要メーカーは以下の通りです。
- トーヨーエイテック
- コマツNTC
- タカトリ(SiC用)
- 安永(化合物半導体用)
ソーワイヤ
ソーワイヤは一般的に真鍮や銅めっきの施された高炭素鋼で、ワイヤーソー装置にセットして使います。主要メーカーは以下の通りです。
- 住友電工
- ジャパンファインスチール
ラッピング装置(ポリッシング装置)
フライス盤や研削盤などの工作機械で加工された素材の表面をさらに平坦に仕上げる機械で、ラップ盤とも呼ばれます。主要メーカーは以下の通りです。
- 不二越機械工業
- スピードファム
- ラップジャパン
熱処理装置
熱処理装置はウェハーを高温の酸素に晒すことで表面を酸化させる装置です。シリコンと酸素を反応させて、絶縁性のシリコン酸化膜を形成します(Si + O2 → SiO2)。
熱処理装置は、Applied Materials、東京エレクトロン、KOKUSAI ELECTRICのシェアが高いです。
洗浄装置
洗浄装置はウェハー表面の汚れを、薬液によって洗浄する装置です。前工程ではウェハーは各工程の装置から次の装置へ移動する際に必ず洗浄・乾燥されます。最も使用される装置と言えるでしょう。
洗浄装置はバッチ式と枚葉式に分けられます。バッチ式はウェハーを複数枚まとめて洗浄し、枚葉式はウェハーを1枚ずつ洗浄します。
バッチ式はスループットに優れ、枚葉式は設置面積や薬液使用量が少なく価格が安い特徴があります。
設置面積 | スループット | 薬液使用量 | 価格 | |
バッチ式 | × | 〇 | × | × |
枚葉式 | 〇 | × | 〇 | 〇 |
バッチ式洗浄装置
SCREENが高いシェアを持っています。次に東京エレクトロンが続きます。
枚葉式洗浄装置
SCREEN、SEMES、東京エレクトロン、Lam Researchが主要メーカーです。
薄膜形成装置
薄膜形成装置はウェハーの表面に様々な材料の薄膜をつける装置で、CVD、スパッタリング、エピタキシャル成長などいくつか方法があります。
CVD成膜装置
CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜装置は、目的となる薄膜の原料ガス(気体)を供給し、熱、プラズマ、光などのエネルギーを与えて化学反応によりウェハーの表面に膜を吸着・堆積させる装置です。
CVD成膜装置は、Applied Materials、Lam Research、東京エレクトロン、ASM、KOKUSAI ELECTRICのシェアが高いです。
スパッタリング成膜装置
スパッタ成膜装置は、ターゲット材料にプラズマ化したアルゴンイオンを高エネルギーで衝突させ、弾き飛ばされたターゲット材料の微粒子をウェハーに付着させて薄膜を形成する装置です。蒸着に比べ膜厚を緻密に制御できること、膜の密着力が強いことが利点です。
スパッタ成膜装置は、Applied Materialsがほぼ市場を独占しています。アルバックとキャノンアネルバもスパッタ成膜装置を製造しています。
エピタキシャル成膜装置
エピタキシャル成長装置は、ウェハー上にシリコンなどの単結晶を成長させるための装置です。
ASMとApplied Materialsが大きなシェアを持っています。
コータ・デベロッパ(塗布・現像装置)
フォトレジストをウェハー表面に均一に塗布し、露光された回路パターンを現像する装置です。
コータ・デベロッパは、東京エレクトロンがほぼ独占しています。
露光装置
露光装置(ステッパ、スキャナ)は、回路のパターンが描画されたマスクに光を照射させ、そのパターンをウェハー畳に塗布したフォトレジストに転写する装置です。フォトレジストは露光部分が可溶化または不溶化し、溶液で可溶部分を除去してウェハー状にパターンを形成します。
露光装置はASMLがほぼ独占しています。キヤノンとニコンも製造しています。特に最先端のEUV露光装置はASMLしか製造できません。
エッチング装置
エッチング装置は、リソグラフィープロセスで形成した回路パターンにそって膜を削る装置です。薬液を使って化学反応で膜を削るウェットエッチングと、ガスやプラズマを用いて膜を削るドライエッチングの2種類があります。
エッチング装置は、Lam Research、東京エレクトロン、Applied Materialsのシェアが高く、日立ハイテクが続きます。
イオン注入装置
イオン注入装置はウェハーに不純物イオンを注入する装置です。不純物と言ってもシリコンウェハーにとっての不純物という意味で、高純度の化学物質です。
イオン注入装置はAxcells、Applied Materials、住友重機械で寡占しています。
CMP装置
CMP装置はウェハー表面の凸凹を研磨し平坦化する装置です。
CMP装置はApplied Materialsと荏原製作所のシェアが高いです。
検査装置
検査にはいくつか種類があります。表面検査装置、測長SEM装置を取り上げます。
表面検査装置
表面検査装置はウェハー上の欠陥・異物を検出する装置です。カメラの画像認識技術を活用するものや、レーザー光を用いた表面や内部の検査を行なうものなどがあります。
KLAのシェアが高く、ASML、日立ハイテク、Applied Materialsが続きます。
測長SEM(CD-SEM)
測長SEM(CD-SEM)は走査型電子顕微鏡(SEM)の応用装置です。 特に半導体等のウェハー上に形成された微細パターンの寸法計測用に特化した装置です。
日立ハイテクのシェアが高く、Applied Materialsが続きます。
プロービング装置
プロービング装置は、ウェハーの電気的検査のため搬送や検査針の位置決めをおこなう装置です。ウェハー上につくりこまれた半導体デバイスの電気的検査のためには、各デバイスとテスティング装置を接続する必要があります。プロービング装置の役割は、デバイス内の電極と、テスティング装置が電気信号を送受信する検査針をコンタクトすること。位置決めの正確な精度、スピードや低振動性などの性能が求められます。
東京エレクトロンと東京精密のシェアが高いです。その他にも、日本マイクロニクス、ティアック、オプトシステムなどが知られています。
ダイシング装置
ダイシング装置は、ウェハー上に形成されたチップを個々のチップに切断分離する装置です。
ディスコと東京精密のシェアが高いです。
ダイボンディング装置
ダイボンディング装置は、支持体に銀ペーストなどの接着剤を塗布してその上にチップを固着する装置です。
BESI(BE Semiconductor Industries)、ASM、K&S(キューリック・アンド・ソファ)のシェアが高く、その次に日本の新川と芝浦メカトロニクスが続きます。
ワイヤボンディング装置
ワイヤボンディング装置は、チップの電極パットとリードフレームとを接続する装置です。
ASM、K&S(キューリック・アンド・ソファ)のシェアが高く、その次に日本のカイジョーと新川が続きます。
モールディング装置(封止装置)
モールディング装置(封止装置)はチップを熱、湿気、光、物理的衝撃などの外的要因から保護するためにチップを樹脂で封止する装置です。
TOWAとアビックヤマダのシェアが高く、BESI、ASMが続きます。
バーンイン装置
バーンイン装置はチップを高温度下において故障因子を加速させ初期不良を除去する装置です。主要メーカーは以下の通りです。
- エスティケイテクノロジー
- シキノハイテック
テスター(テスティング装置)
テスター(テスティング装置)は、電気的特性や外観などの最終性能試験を行う装置です。
アドバンテストとテラダインがほぼ独占しています。Xcerraとイノテックも製造しています。ほかにはテセック、AccoTESTなどもあります。
プローブガード
プローブガードは、テスターで使用される接続治具(探針)です。主要メーカーは以下の通りです。
- Form Factor
- Technoprobe
- 日本マイクロニクス
- 日本電子材料
- MPI Corporation
- SV TCL
- Korea Instruments
その他装置
半導体ハンドラー
半導体ハンドラーは、パッケージングされ完成した半導体を半導体テスターにセットし、その検査結果に基づき良品/不良品に分類する装置です。
COHU、Techwing、アドバンテスト、Xcerraが主要メーカーです。
搬送装置
搬送装置はクリーンルーム内でウェハーを搬送する装置です。
ダイフクと村田機械がほぼ半分ずつシェアを持っています。
排ガス処理装置
排ガス処理装置は、除害装置、スクラバーとも呼ばれ、製造工程で使用される様々なガスを無害化し、安全に排出するための処理装置です。主要メーカーは以下の通りです。
- Atlas Copco
- カンケンテクノ
- 荏原製作所
- 大陽日酸
- エア・ウォーター
まとめ
この記事では、半導体製造プロセスの各工程に使用される半導体製造装置28種とその主要な半導体製造装置メーカーのべ約100社を紹介しました。
日本企業が大きなシェアを持つ装置がある一方で、市場規模が大きな装置はアメリカ企業やオランダ企業のシェアが高くなっていました。日本のメーカーシェアが50%を超える製造装置は、マスク検査装置、バッチ式洗浄装置、枚葉式洗浄装置、コータ・デベロッパ、測長SEM、プロービング装置、ダイシング装置、モールディング装置、テスター、搬送装置でした。
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