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SAFメーカーランキング|日本と世界のSAFメーカー11社と開発状況

飛行機 バイオ燃料

バイオマスを原料として製造した航空燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel、持続可能な航空燃料)は、持続可能な社会の実現のために生産の拡大が見込まれています。

この記事では、日本と世界のSAFメーカーとその開発状況について紹介します。SAFの生産はアメリカとヨーロッパで先行していますが、日本でも本格的に生産が始まります。

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日本のSAFメーカー

メーカー製造場所SAF生産方式年間生産能力製造開始時期
コスモ石油大阪HEFA3万kL2024年
ENEOS和歌山HEFA40万kL2027年
富士石油千葉18万kL2027年
出光興産山口HEFA25万kL2028年
出光興産千葉ATJ10万kL2028年
太陽石油沖縄ATJ22万kL2028年

SAFはいくつかの生産方式がありますが、当面は植物油や廃油を原料とするHEFA方式でSAFが生産される見通しです。HEFAの次世代としてバイオエタノールを原料とするATJ方式が採用されています。

コスモ石油

コスモ石油は、石油製品を精製・販売する石油元売企業です。

コスモ石油は、大阪の堺製油所にて、国内初となる廃食用油を原料とした国産SAFの製造設備を完成させました。この設備で、2024年からHEFA方式によって年間3万キロリットルのSAFを生産する計画です(日経新聞)。

また、三井物産と連携し、バイオエタノールを原料としたATJ方式によるSAFの製造をおこない、2027年時点で年間22万キロリットルの製造を目指しています(コスモ石油プレスリリース)。

コスモ石油

ENEOS

ENEOSは、石油製品の精製および販売等を行う企業で、日本の石油元売として最大手、世界では第6位の規模を持ちます。

ENEOSはTotalと提携して、2027年に和歌山県で年間40万キロリットルのSAFを生産します(ENEOSニュースリリース)。

ENEOSは、廃食油を原料とするHEFA方式でSAFを生産します。HEFA方式では原料となる廃食油の入手ルートの確保が重要です。ENEOSは、Totalが世界中で集めた廃食油を輸入したり(日経新聞)、野村事務所、吉川油脂、HMLPと提携して外食産業などから入手する計画です(ENEOSニュースリリース)。

また、ENEOSは製造したSAFを日本航空JALへ販売する契約を結んでいます(ENEOSニュースリリース)。

ENEOS

富士石油

富士石油は、原油の精製や石油製品の販売を行なっています。京葉工業地域に製油所を持ち、燃料油は出光興産、ENEOS、日本航空へ、ナフサ等の石油化学原料は隣接する住友化学へ、重油はJERAへ、主に減圧残油熱分解装置から出る石油ピッチは日本製鉄の主要工場へと供給しています。

富士石油は伊藤忠と連携し、千葉の袖ヶ浦製油所で、2027年に年間18万キロリットルのSAF製造を目指しています(日経新聞)。

富士石油

出光興産

出光興産は1911年に創業され、石油精製、石油化学を主力事業としながら、電子材料、リチウムイオン電池材料など多方面の事業も展開しています。

出光興産は2028年までに山口県や千葉県でSAFを年間35万キロリットル生産します。

出光興産の山口県の徳山事業所では、2028年からHEFA方式によって年間25万キロリットルのSAFを生産する計画です(出光興産ニュースリリース)。

また、出光興産の千葉製油所では、2028年からATJ方式によって年間10万キロリットルのSAFを生産する計画です(出光興産ニュースリリース)。当初は2026年生産開始の予定でしたが、2028年開始へスケジュールが見直されました(日経新聞)。原料のバイオエタノールを国内外から調達し、世界初の10万キロリットル級のATJ方式のSAF製造に取り組みます。

太陽石油

太陽石油は、石油製品の精製および販売等を行っています。SOLATOのブランド名でガソリンスタンドを展開しており、日本市場の占有率は4位です。

太陽石油はグループ会社の南西石油が所有する沖縄県の設備・遊休地を活用し、2028年から年間22万キロリットルのSAFを生産します(太陽石油ニュースリリース)。

太陽石油は、植物を発酵させて得られるエタノールを原料とするATJ方式でSAFを生産します。アメリカのLanzaJetの技術を活用し、ブラジルやアメリカからサトウキビやトウモロコシを輸入して使用します。

太陽石油

アメリカのSAFメーカー

メーカー製造場所SAF生産方式年間生産能力製造開始時期
World Energyカリフォルニア州HEFA95万kL2024年
World Energyテキサス州HEFA95万kL2025年
LanzaJetジョージア州ATJ3.8万kL2024年
LanzaJetイリノイ州ATJ45.6万kL
Chevronルイジアナ州

World Energy

World Energy は2016年からカリフォルニア州パラマウントでSAFを生産しています。生産能力を徐々に上げており、2024年は年間95万キロリットルにする計画です。さらに2025年にはテキサス州ヒューストンにも年間95万キロリットルの生産能力の工場を建設中です。

World Energy は、HEFA方式のSAF生産に注力していますが、将来的にはPTL方式のSAFの生産も検討しています。

World Energy

LanzaJet

LanzaJetはATJ方式のSAF製造技術の商業化を目指して、2020年に設立されました。

LanzaJetは2024年には世界初となるATJ方式のSAF生産工場をジョージア州に建設しました(LanzaJetプレスリリース)。この工場では年間3.8万キロリットルのSAFを生産できます。

さらに、イリノイ州にも年間45.6万キロリットルのSAF生産工場を建設予定です(LanzaJetプレスリリース)。

LanzaJetは2030年までに年間約385万キロリットルのSAFを生産する計画です。

LanzaJet

Chevron

Chevronはアメリカに本社を置く多国籍企業で、世界180ヶ国以上でビジネス展開しています。代替エネルギー分野では、燃料電池、太陽光発電、二次電池、バイオ燃料、水素燃料、地熱発電などへの投資を積極的に行っている。

Chevronはバイオ燃料大手のRenewable Energyを買収しました。Renewable Energyは、アメリカとヨーロッパで11のバイオ燃料工場を運営しており、2020年には170万トンのバイオ燃料を生産しています。そのうち、ルイジアナ州ガイスマーにある製油所でSAFを生産しています。

ヨーロッパのSAFメーカー

メーカー製造場所SAF生産方式年間生産能力製造開始時期
NesteフィンランドHEFA
NesteオランダHEFA67万kL2023年
NesteシンガポールHEFA133万kL
TotalEnergiesフランスHEFA13万kL2019年
TotalEnergiesフランスHEFA23万kL2023年

Neste

Nesteはフィンランドの企業で、SAF、バイオディーゼル、バイオナフサなどのバイオ燃料のリーディングカンパニーです。廃油を原料とするHEFA方式でバイオ燃料を製造しています。

Nesteは、フィンランド、オランダ、シンガポールの製油所、およびカリフォルニア州マルティネスのマラソン・ペトロリアムとの合弁事業を通じて、バイオ燃料を生産しており、生産能力は年間550万トンです。ロッテルダム製油所の生産能力拡大プロジェクトが完了すると、生産能力は2026年末までに年間680万トンに増加します。

Nesteは、フィンランド、オランダ、シンガポールでSAFを生産しています(Nesteホームページ)。このうちオランダのロッテルダム工場はヨーロッパ最大のSAF生産工場で、2023年に年間67万キロリットルの生産能力でSAFの生産を開始し、2026年に年間160万キロリットルに生産能力を増強します。シンガポールでも年間133万キロリットルのSAFを生産しています。

Neste

TotalEnergies

TotalEnergiesはフランスに本社を置く多国籍企業で、40以上の国で原油や天然ガスの採掘を行い、30以上の製油所を展開しています。

TotalEnergiesは2019年からLa Mede製油所でHEFA方式のSAFを年間13万キロリットル製造しています。

また、Grandpuits製油所でもHEFA方式で2020年から23万キロリットル製造しています。Grandpuits製油所では設備投資して2028年に生産能力を38万キロリットルに増産する計画です。

TotalEnergies

Shell

Shellはイギリスに本社を置く多国籍企業で、グループ企業は145の国に広がり、世界中に47以上の製油所を展開しています。2000年代の初めからは代替エネルギーに力を注ぎ、太陽光発電・風力発電・水素プロジェクトなどの新規分野にも積極的に投資をしています。

Shellは2022年に、HEFA方式でSAFを生産するシンガポールのEcoOilsを買収しました。

また、Shellは、ATJ方式でSAFを生産する技術を持つLanzaJetからライセンスを受けてSAF生産工場を建設する計画です。

SAFの需要

航空分野でのCO2排出量削減のためには、従来の燃料にくらべてCO2削減効果のあるSAFの利用が不可欠です。しかし、2022年時点の世界のCO2の供給量は約30万キロリットル。これは、世界のジェット燃料供給量の0.1%程度とされています。

世界の航空会社で構成される業界団体International Air Transport Association(IATA)は、2050年に航空輸送分野でネットゼロを達成するためには、約4.5億キロリットルのSAFが必要と推計しています。

世界のSAF需要
(出典)IATA Net zero 2050: sustainable aviation fuels

SAFの生産方式

SAFの製造方法として、現在は植物油や廃油を原料とするHEFA方式や、バイオエタノールを原料とするATJ方式が主流です。しかし、これらの方式は供給量が限られていたり原料が食料と競合するため、SAFの生産量を大幅に増やすことができません。

将来的には、ごみをガス化して得られる合成ガスを原料とするFT方式や、CO2と水素を原料とするPTL方式でSAFを製造することが求められます。

SAFの現状と今後
(出典:SkyNRG

まとめ

この記事では、日本と世界のSAFメーカーとその開発状況について紹介しました。SAFの生産はアメリカとヨーロッパで先行していますが、日本でも本格的に生産が始まります。

SAFの製造方法として、現在は植物油や廃油を原料とするHEFA方式や、バイオエタノールを原料とするATJ方式が主流ですが、今後は、ごみから得られる合成ガスを原料とするFT方式や、CO2と水素を原料とするPTL方式でSAFを製造することが求められます。

関連書籍

バイオ燃料関係の書籍を紹介します。

世界各国でカーボンニュートラル化の動きが加速する中、輸送部門におけるカーボンニュートラル化を進める上での「電動〔電気自動車(EV)〕化」「水素活用」に続く第3のアプローチとして「燃料のカーボンニュートラル化」が注目を集めています。本書では、バイオ燃料や合成燃料に代表されるこれらカーボンニュートラル燃料の現状と可能性をグローバルに見渡し、普及に向けた産業・企業レベルでの課題や解決の方向性について提言しています。

化石燃料であるガソリンに替わる燃料として注目度が増しているカーボンニュートラル燃料について、産業界の現状とこれからの普及に向けた技術開発の最新情報を図表を交えながらわかりやすく解説されています。最新のバイオ燃料について知りたい方、脱炭素実現に向けてカーボンニュートラル燃料の使用を検討している方におすすめです。

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