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ペロブスカイト太陽電池のメリット・デメリット|シリコン系太陽電池と比較

ペロブスカイト太陽電池(アイキャッチ) ペロブスカイト太陽電池

ペロブスカイト太陽電池のメリット・デメリットを紹介します。ペロブスカイト太陽電池は急速に性能が向上しており、以下のような多くのメリットがある太陽電池となりました。ペロブスカイト太陽電池は、現在主流のシリコン系太陽電池と同等の性能で、しかもシリコン系太陽電池が設置できない場所や用途でも使用できることが期待されています。

メリット

  • 曲げられる
  • 軽い
  • 弱い光でも発電できる
  • 日本国内で原料が調達可能
  • 光透過性がある
  • シリコン系太陽電池が設置できない場所に設置できる
  • 宇宙放射線に対し耐性がある

一方で、今後の課題となるデメリットも残っています。

デメリット

  • 寿命が短い
  • 毒性のある鉛を使用している
  • 面積を大きくするのが難しい
  • リサイクル方法が確立されていない
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ペロブスカイト太陽電池のメリット

曲げられる

一般的に普及しているシリコン系太陽電池や化合物半導体系太陽電池は硬くて平面ですが、ペロブスカイト太陽電池はフィルム上に作製できるため曲面に貼り付けることができます。ペロブスカイト太陽電池はこの特徴を生かして、電気自動車の車体、衣類やカバンなど、これまで不可能だったさまざまな場所に取り付けることが可能です。

軽い

シリコン系太陽電池はガラス板上に作製されて重いのに対し、ペロブスカイト太陽電池はプラスチックフィルム上に作製できるため軽いです。重いシリコン系の太陽電池は建物の上に大規模に設置するには限界がありましたが、ペロブスカイト太陽電池なら重さをあまり気にせず大量に設置することができます。

さらに、ドローン、飛行機、自動車など軽さがメリットになる用途でペロブスカイト太陽電池の活用が期待されています。

太陽電池を設置した自動車

弱い光でも発電できる

ペロブスカイト太陽電池は弱い光でも発電できます。従来のシリコン太陽電池では、約100,000ルクスの光が無ければ十分に発電できませんでしたが、ペロブスカイト太陽電池では1,000ルクスや200ルクスといった低照度でも発電できます。

そのため曇りや雨天などの天候でも発電できます。また、室内のLED照明などでも発電できるため、屋内のIoT機器用電源など、さまざまな活用シーンが期待されています。

照度(ルクス)目安の状況結晶シリコン
太陽電池の
変換効率
ペロブスカイト
太陽電池の
変換効率
100,000晴れの日の太陽光22.0%23.0%
1,000雨の日の太陽光31.0%
200蛍光灯1.2%32.6%
(出典:企業の省エネ・CO2削減の教科書

日本国内で原料が調達可能

ペロブスカイト太陽電池 の主要な原料である「ヨウ素」は、日本はチリに次ぐ世界2位の生産国で、世界の29%のシェアを持っています。さらに推定埋蔵量では、日本のシェアは圧倒的1位で世界の78%のシェアを持っています。

光透過性がある

ペロブスカイト太陽電池 は、光透過性があるので、ガラス窓にも使用できます。

シリコン系太陽電池が設置できない場所に設置できる

日本政府は2030年度に電源構成の14%~16%を太陽光発電で構成する方針です。しかし、実はすでに日本は平地面積における太陽光発電導入容量が主要国の中で1位であり、太陽光発電に適した土地が少なくなってきています。つまり、これまでの延長線上では目標を達成することは困難です。

平地面積当たりの太陽電池設備容量
(出典:経済産業省 2030年に向けたエネルギー政策の在り方

このような状況ですが、建物の窓や壁など、従来のシリコン系太陽電池が設置できなかった場所にペロブスカイト太陽電池を設置することで、再生可能エネルギーの普及を拡大することが期待されています。

ペロブスカイト太陽電池の壁面設置
(出典:NEDO

宇宙放射線に対し耐性がある

宇宙空間では太陽光発電が唯一の実用的なエネルギー源です。ペロブスカイト太陽電池は放射線に対し耐性を有しているため、宇宙事業での利用も期待されています。

ペロブスカイト太陽電池のデメリット

寿命が短い

シリコン太陽電池の場合、耐用年数は約20年ですが、ペロブスカイト太陽電池の耐用年数は長くて10年程度です。ペロブスカイト太陽電池の寿命が短いのは湿気に弱いのが主な理由のため、コーティングを万全にする対策が検討されています。

毒性のある鉛を使用している

ペロブスカイト太陽電池に含まれるペロブスカイト化合物は、人体に有害な鉛が使用されており、安全性に問題がある点も課題です。そのため、特に鉛に代わる原料で製造できないか、国内外の研究所での研究が進められています。京都大学では鉛の代わりに「スズ」を、桐蔭横浜大学では「AgBi2I7」を使用すべく研究と開発を進めています。

面積を大きくするのが難しい

ペロブスカイト太陽電池は大型化すると材料のペロブスカイトの結晶を均一にすることが難しく、結晶がばらつく影響で変換効率が低下してしまう課題がありました。ただし近年では面積の大きいペロブスカイト太陽電池も実現され始めています。

リサイクル方法が確立されていない

ペロブスカイト太陽電池には鉛が含まれているためリサイクルは絶対に必要です。現在は太陽電池の変換効率や安定性に開発が集中しているため、リサイクルのための検討は後回しにされています。しかし、これはシリコン系太陽電池も同様でしたし、ペロブスカイト太陽電池の普及が進めばリサイクル方法の検討も進むと考えられます。

関連書籍

「ペロブスカイト太陽電池の開発最前線」は、ペロブスカイト太陽電池の材料の改良製造方法の改良性能評価方法について、各分野の国内の専門家が解説した本です。

「ペロブスカイト太陽電池: 光発電の特徴と産業応用」は、太陽電池としてトップクラスのエネルギー変換効率に進化したペロブスカイト太陽電池の、研究の背景、歴史、しくみ、応用技術を解説した本です。

  • 第1章 太陽エネルギーとサステイナビリティ
  • 第2章 ペロブスカイト太陽電池の発見と先導研究
  • 第3章 ハロゲン化ペロブスカイト結晶の光物性
  • 第4章 ペロブスカイト薄膜の作製
  • 第5章 ペロブスカイト太陽電池の性能
  • 第6章 ペロブスカイト太陽電池の高効率化
  • 第7章 鉛を用いないペロブスカイト太陽電池
  • 第8章 広がる産業応用
  • 第9章 地産地消の自給自足電力としての普及

「大発見の舞台裏で! ―ペロブスカイト太陽電池誕生秘話」は、ペロブスカイト太陽電池開発のドラマチックな展開と熾烈な研究開発の舞台裏が書かれた本です。

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