G-B8ZBWWKGWV
PR

ゼオライト吸着によるCO2分離|平衡効果と立体効果による選択的CO2吸着

ゼオライト カーボンリサイクル

ゼオライトは様々な用途がありますが、CO2を分離・回収するための効果的な吸着材としても開発が進められてきました。ゼオライトは、骨格外金属の種類、Si/Al比率、トポロジーなどによりCO2分離性能が変わります。

ゼオライトによるCO2分離について、平衡効果と立体効果の2種類のメカニズムがあることを説明し、それぞれのメカニズムでのCO2分離の実例を紹介します。

スポンサーリンク

CO2吸着材としてのゼオライト

ゼオライトは結晶性アルミノケイ酸塩の多孔質材料です。組成式はMn+1/n(AlO2)(SiO2)x・yH2Oで表され、陽イオンやAl/Si比率によって多様な結晶構造を形成します。

CO2吸着材としてゼオライトは有力な材料のひとつです。

ゼオライトのCO2吸着メカニズム

平衡効果によるCO2吸着

CO2がゼオライトに吸着される際、ファンデルワールス力、静電相互作用、弱い化学反応という3種類の相互作用が働きます。

ファンデルワールス力は、すべてのガスに対して非特異的に発生する弱い相互作用で、通常は大きな分極率を持つガスほどファンデルワールス力が強くなります。

ゼオライトはイオン性骨格構造に由来する表面電場により、ガスとの間で静電相互作用が発生します。静電相互作用は分極率と多重局モーメントが大きいガス分子との間で強くなります。

ゼオライト内の弱い化学反応は、ガス分子と特定の遷移金属カチオン(CuやAgなど)間の錯体の形成や、CO2とゼオライト中の塩基点との相互作用を指します。

N2、O2、CH4などと比較してCO2は分極率、四重極モーメント、化学反応性がかなり高く、ゼオライトとの相互作用が強いです。この特性により、ゼオライトを利用するとN2、O2、CH4などから選択的にCO2を吸着させることができます。

立体効果によるCO2吸着

CO2の分子サイズはN2やCH4などより小さいため、CO2とN2やCH4の中間のサイズの開口部をもつゼオライトによりふるい分けすることができます。この立体効果によるメカニズムは結晶構造の開口部サイズを均一にできるゼオライトに適しています。

ガス分極率 (x10-25cm3)分子サイズ (nm)
CO229.110.33
N217.400.36
CH425.930.38
O215.810.35

ゼオライトによるCO2分離・回収の研究例

平衡効果によるCO2分離用に設計されたゼオライトは、CO2容量と吸着速度が高いです。対照的に、立体効果によるCO2分離用に設計されたゼオライトは、CO2容量と吸着速度が低い傾向がありますがCO2の選択性が高いです。

平衡効果を利用したCO2分離・回収

8員環ゼオライトZK-5の陽イオンをさまざま(H+、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+)交換させたゼオライトでCO2吸着性能を比較した研究では、Mg-ZK-5が最高の吸着容量を示しました。また、選択性も加味した吸着性能では、Li-ZK-5、Na-ZK-5、K-ZK-5が優れていました。これらのゼオライトでは金属カチオン(Li、Na、K)が主なCO2吸着サイトであるとわかりました[1]。

アミン修飾ゼオライトも平衡効果によるCO2とN2の分離が可能でした[2]。CO2は酸塩基相互作用によってアミンに選択的に捕捉されますが、N2はアミンと相互作用しません。特にCO2とアミンとの反応は比較的高温で発生する可能性があるため、アミン修飾ぜおらいとは高温でのCO2分離に効果的です[3]。

ゼオライト骨格外の金属カチオンとゼオライト呼格内の酸素原子は、どちらも低濃度のCO2の吸着サイトとして働きます[4-6]。

低濃度CO2吸着部位としての金属カチオンは、その特定の位置によっても効果に差が出ます。LTAゼオライトでは8MRと6MRの位置にふたつのCa2イオンがあることが極めて需要であることがわかりました[7]。特定の位置にふたつのCa2イオンがあることにより、CO2が同時に相互作用できるようになり、CO2の吸着力が向上します。

立体効果を利用したCO2分離・回収

LTAゼオライトは開口部にNaイオンがあります。このNaイオンを部分的にKイオンに置換すると、Kイオンのほうが大きいために開口部が小さくなります。この影響で、比較的サイズの大きいN2がゼオライト内に入り込めなくなり、CO2を選択的に捕捉することができます[8-11]。

今後の課題

実際にCO2を分離する吸着剤としてゼオライトを使用する場合、ゼオライトのCO2吸着性能は様々な動作条件(温度、圧力、流量、ガス組成)によって変わる可能性があります。たとえば、平衡効果によるCO2分離用ゼオライトは、CO2吸着性能と脱着性能のトレードオフの課題があります。また、立体効果によるCO2分離用ゼオライトは、CO2選択性と吸着速度のトレードオフの課題があります。

さらに、水分を含むガスに適用すると、ゼオライトが不活性化する問題もあります。ゼオライトはCO2よりもH2Oとの相互作用が強いためです。この問題は、ゼオライト吸着材の前に乾燥剤を組み込むシステムにすることで対応できます。

まとめ

ゼオライトは様々な用途がありますが、CO2を分離・回収するための効果的な吸着材としても開発が進められてきました。ゼオライトは、骨格外金属の種類、Si/Al比率、トポロジーなどによりCO2分離性能が変わります。

ゼオライトによるCO2分離について、平衡効果と立体効果の2種類のメカニズムがあることを説明し、それぞれのメカニズムでのCO2分離の実例を紹介しました。

関連文献

タイトルとURLをコピーしました