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芳香族化合物を合成するための、クロスカップリング反応の選び方

反応
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こんな化合物を合成したい!と思ったら、次はその化合物の合成方法を考えます。

この記事では、C(sp2)-C(sp2)結合またはC(sp2)-C(sp3)結合を形成するクロスカップリング反応を利用して有機化合物を合成する場合の、鈴木カップリング、スティレカップリング、熊田カップリングを利用した合成方法の選び方を紹介します。

けむさん
けむさん

鈴木-宮浦カップリングについては他にも記事を書いていますので、ぜひご覧ください

化合物の合成方法の選び方

まずはSciFinderで類似化合物の合成方法を検索して、見つかった文献の条件で合成しましょう。文献の実績通りに合成するとうまくいく可能性が高いです。

でもこんな時は自分で合成条件を探さないといけません。

  • 類似化合物の合成方法が見つからない。
  • 文献は見つかったが、特殊な試薬を使用していて実施できない。
  • 文献の合成方法は収率が低い。
  • あまり信用できない文献だ。

そんな時の化合物の合成方法を紹介します。

けむさん
けむさん

私の経験談です。参考になればうれしいです

C(sp2)-C(sp2)結合形成反応

C(sp2)-C(sp2)結合形成反応の選び方

まずは鈴木カップリングで合成することを考えます。鈴木カップリングで逆合成した場合の原料となるハロゲン化合物とホウ素化合物を考えます。C(sp2)-C(sp2)結合形成反応の場合、片方をハロゲン化合物とするともう片方がホウ素化合物になり、2通りの選び方があります。

ホウ素化合物を購入できる場合、購入して条件1または条件2で鈴木カップリングするのが最も早いです。ふつうは条件1で、酸化的付加しにくいハロゲン化合物の場合は条件2で合成します。

条件1
条件2

ホウ素化合物を購入できない場合、使用するホウ素化合物が安定に取り扱えるかどうか考えます。ピリジンやチオフェンのような複素芳香族化合物のホウ素化合物は不安定な場合があります。

ホウ素化合物が安定な場合、条件3または条件4でホウ素化合物を合成します。そして合成したホウ素化合物を使用して、条件1または条件2で鈴木カップリングします。ふつうは条件3で、リチオ化すると反応してしまう官能基がある場合は条件4で合成します。

条件3
条件4

ホウ素化合物が不安定な場合、鈴木カップリングはあきらめてスティレカップリングをします。

スズ化合物を購入できる場合、購入して条件5でスティレカップリングします。

条件5

スズ化合物を購入できない場合、条件6でスズ化合物を合成します。そして合成したスズ化合物を使用して、条件5でスティレカップリングします。

条件6

C(sp2)-C(sp3)結合形成反応

鈴木カップリング反応はC(sp2)-C(sp3)結合を形成することもできます。C(sp2)側がアリールハロゲン化合物、C(sp3)側がアルキルホウ素化合物です。

ホウ素化合物を購入できる場合、購入して条件1で鈴木カップリングするのが最も早いです。

条件1

ホウ素化合物を購入できない場合、使用するホウ素化合物に変換できるエステル化合物があるか調べます。

変換できるエステルがある場合、条件2でエステルからホウ素化合物を合成します。そして合成したホウ素化合物を使用して、条件3で鈴木カップリングします。

条件2
条件3

変換できるエステルがない場合、使用するホウ素化合物に変換できるハロゲン化合物があるか調べます。

変換できるハロゲン化合物がある場合、条件4でハロゲン化合物からホウ素化合物を合成し、鈴木カップリングします。

条件4

まとめ

クロスカップリング反応は、触媒、配位子、塩基、溶媒、反応条件を変えると反応収率など結果が変わります。色々調べて考えることは面白いのですが時間がかかります。収率はそこそこでいいから早く合成したい場合は、自分の中でパターン化した合成方法を持っておくと仕事がはかどります。

この記事では、C(sp2)-C(sp2)結合またはC(sp2)-C(sp3)結合を形成するクロスカップリング反応を利用して有機化合物を合成する場合の、鈴木カップリング、スティレカップリング、熊田カップリングを利用した合成方法の選び方を紹介しました。

紹介したのは私が実際にやっていた方法です。基質が変わるとこの方法ではうまくいかない場合があるかもしれません。その時はみなさんの基質に合う方法を探してみてください。

クロスカップリング反応のまとめ記事です。

関連書籍

クロスカップリング反応は、日本の学術研究者が率先して発展させた反応技術で、産業界でも活発に利用されています。例えば有機ファイン製品(医薬、電子材料等)の合成手法として、急速に普及しており、現在、欠かせない技術となっています。本書では基礎と応用を分かり易く紹介。監修者はノーベル化学賞受賞者の鈴木章博士。

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