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化学メーカーにおけるカーボンフットプリント(CFP)の取り組みと算出範囲

CFP 化学メーカーの仕事内容
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化学は鉄鋼に次いで2番目に多くのCO2を排出している産業部門です。化学産業は製造時にCO2を多量に排出する産業のため、カーボンニュートラルへの大きな貢献が求められています。

日本の温暖化ガス排出量
(出典:国立環境研究所 日本の温室効果ガス排出データを基に著者作成)

最近、化学メーカーが製造する製品について、カーボンフットプリント(CFP)を算出するよう顧客から要望されることが増えてきました。

けむさん
けむさん

私の会社にも顧客からのCFP算出依頼が来ています。

CFPは環境保護および他社との差別化の観点で重要です。この記事では、CFPとは何か、CFPに取り組む意義・目的、CFPの算出範囲についてわかりやすく説明します。

カーボンフットプリント(CFP)とは?

カーボンフットプリント(CFP)とは、ある製品について、ライフサイクルを通じて排出される温室効果ガスの量をCO2換算量で表したものです。単位は、化学製品の場合は主にkg-CO2e/kg(製品1kg当たりの温室効果ガスの量のCO2換算重量)で表します。その他、kg-CO2e/個(製品1個あたり)、kg-CO2e/m2(シート状の製品の場合、製品1m2あたり)など、製品ごとに適切な単位が用いられます。

例えば自動車や電子製品などの化学業界が関わる製品では、基礎化学品・中間化学品・最終化学品の素材生産工程から、製品生産、流通・販売、使用・維持、廃棄・リサイクルまでのライフサイクルを通して各工程で排出された温室効果ガスの量をCO2換算量で表した値がCFPとなります。

製品ライフサイクル

温室効果ガスの量のCO2換算重量

CO2以外の温室効果ガスを排出する場合、排出量にそれぞれの地球温暖化係数をかけてCO2換算した量で表します。ISO14067の規定や、国際的な基準等に従い、100年係数(GWP100)を用いて計算します。

化合物化学式GWP100
二酸化炭素CO21
メタン(化石燃料由来)CH430
メタン(非化石燃料由来)CH427
一酸化二窒素N2O273
HFC-32CH2F2771
HFC-134aCH2FCF31,526
HCFC-22CHClF21,760
CFC-11CCl3F6,226
CFC-12CCl2F210,200
HexafluoroethaneC2F611,100
Nitrogen trifluorideNF316,100
Sulfur hexafluorideSF623,500

CFPは、ISO14040、14044(LCA)、14067(CFP)により考え方および手順が標準化され、Plastics Europe、WBCSD Chemical Sectorにより化学製品のガイダンスが発行されています。

カーボンフットプリント(CFP)に取り組む意義・目的

気候変動は世界が直面する最大の課題のひとつとして認識されており、今後数十年に渡ってビジネスと市民に影響を与え続けることが予想されます。CFPに取り組むことは、環境保護および他社との差別化の観点で重要です。

カーボンニュートラルの実現

日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを目標に定めています。カーボンニュートラルを実現するためには、CO2排出量が少ない製品が選択されるようになる必要があり、その指標として製品単位の排出量(CFP)が不可欠です。

自社製品のCFPの低減

CFPに取り組んだ企業は、CFPを算出するために用いた情報を元に、排出削減のために優先的に対応するべきポイントがわかり効果的な排出削減対策を検討できます。

グリーン調達

CFPの小さい製品は、政府や企業からの調達で有利になります。例えば、日本のグリーン購入法、アメリカのBuy Clean Initiative、EUのCBAM(carbon border adjustment mechanism)など、環境に配慮した商品調達を推進する法律環境へ悪影響のある商品への規制があります。

企業ブランディング・製品マーケティング

CFPの小さい製品は、消費者への企業ブランディング製品マーケティングでも有利になります。今後は顧客から自社製品のCFP算出を求められる機会が増えますので、顧客満足のためにも積極的にCFPに取り組むことが不可⽋です。

CFPに取り組む意義・目的
(出典:経済産業省資料をもとに著者作成)

カーボンフットプリント(CFP)の算出範囲

CFPの算定範囲はライフサイクル内の立ち位置によって変わります。製品の構成部品を提供する化学製品では、Cradle to Gateと呼ばれる、天然資源の採取から化学製品の生産までの範囲で計算することが一般的です。一方、自動車や電子製品など直接消費者に販売する製品では、Cradle to Graveと呼ばれる、天然資源の採取から廃棄・リサイクルまでの範囲で計算することが一般的です。

製品ライフサイクルと算定範囲

CFPを算出するためには、ライフサイクル上のひとつ前の原料メーカーにCFPを問い合わせるか、あるいは公開されたデータベースを用いて原料の排出量を推算しなければなりません。データベースとしては、産総研が開発したIDEAが有用です。

CFP算出範囲は、スコープ1~3と、さらにスコープ3の中に15のカテゴリーを設けて分類されています。素材産業の化学メーカーが自社製品のCFPを計算する場合、スコープ1、スコープ2、スコープ3(カテゴリー1,3,4,5)がCFPの値に大きく影響すると考えられます。

スコープ1 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
スコープ2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
スコープ3カテゴリー1購入した製品・サービス
 カテゴリー2資本財
 カテゴリー3スコープ1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動
 カテゴリー4輸送、配送(上流)
 カテゴリー5事業から出る廃棄物
 カテゴリー6出張
 カテゴリー7雇用者の通勤
 カテゴリー8リース資産(上流)
 カテゴリー9輸送、配送(下流)
 カテゴリー10販売した製品の加工
 カテゴリー11販売した製品の使用
 カテゴリー12販売した製品の廃棄
 カテゴリー13リース資産(下流)
 カテゴリー14フランチャイズ
 カテゴリー15投資

カーボンフットプリント(CFP)を算出することになったら

もし、あなたが自社の中でCFPを算出する担当者になった場合、経済産業省、環境省によるカーボンフットプリントガイドラインを一読することをおすすめします。社内でCFPについて相談できる人がいない場合、第二部のCFP に関する取組指針を参考にCFPを算出していくことができます。

カーボンフットプリント(CFP)の具体的な算出方法

住友化学は、化学製品に特化したCFP算出ツールCFP-TOMOを開発し、無償で提供しています。化学メーカーのCFP算出担当者は参考にすることができます。

具体的な使用方法は別の記事で説明します。

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