活性炭とは?
活性炭(英 Activated carbon)は、ヤシ殻、石炭、木屑などの原料となる炭素物質を「炭化」したのち、さらに化学的または物理的な処理で「賦活」することで直径1~20nmの細孔を大量に形成させた、炭素を主な成分とする多孔質材料です。活性炭の細孔は様々な大きさのものが分布していますが、他の多孔質材料と比較して活性炭の特徴はミクロ孔が多いことです。
- ミクロ孔:直径2 nm以下の細孔
- メソ孔:直径2~50 nmの細孔
- マクロ孔:直径50 nm以上の細孔
ほとんどの活性炭は90%以上が炭素で、炭素の一部はH、O、N、Sなどとの化合物となっています。灰分は原料固有の成分でNa、K、Ca、Fe等が含まれています。
活性炭の製造方法
原料となる炭素物質は「炭化」と「賦活」の2工程で細孔を形成します。その後精製して不純物を除去し、各種用途に合わせて粒径調整や成型して製品化します。使用原料や製造方法によって活性炭の細孔形状や比表面積は変化し、吸着性能に差が出ます。
- 炭化:原料を200℃~600℃かつ無酸素状態で蒸焼きにします。
- 賦活:炭化した原料中の有機物や無機物の固形物を、熱や薬品によって分解・蒸発させることです。炭化処理によって出来た細孔に、賦活処理でさらに多くの細孔を付加し、表面積を大きくします。
- 精製:塩酸、硝酸、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウムなどの水溶液で洗浄して不純物を除去します。
- 後処理:粒径調整(粉砕、篩)、熱処理、成形など。
活性炭の原材料
加熱して炭化できる物質はすべて原料にすることができます。活性炭を工業的に生産する場合、安価で大量に安定して入手できる原料が必要です。そのような原料として、おが屑、ヤシ殻、石炭などが主流です。ピッチ、タール、パルプ廃液、廃糖蜜などは、粒状活性炭を製造するときの造粒のための粘結剤として使用されます。
現在、世界で広く使用されている活性炭の原料を下の表にまとめました。
ヤシ殻活性炭は、他の木質材料と同様で、セルロース、ヘミセルロース、リグニンなどのほか、炭素、酸素、水素といった物質からなっていますが、天然素材の中でも特に硬質な部類で、しかも安定的に多量のヤシ殻が供給されるため、活性炭原料として広く使用されています。
粉末活性炭 | おが屑 硬質の木材チップ 木炭(素灰) 草炭(ピート) |
粒状活性炭 | 木炭 ヤシ殻 石炭(亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭等) オイルカーボン フェノール樹脂 |
繊維状活性炭 | レーヨン アクリロニトリル 石炭ピッチ 石油ピッチ フェノール樹脂 |
炭化
原料を200℃~600℃かつ無酸素状態で蒸焼きにします。
賦活
賦活は炭素質原料を多孔質材料に変える反応操作です。方法としては薬品賦活とガス賦活の2種類があります。
薬品賦活
炭化後の原料に、繊維質を浸食する薬品を添加・浸透させ、不活性ガス雰囲気中で500~700℃の温度で焼成します。薬品としては、塩化亜鉛、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、燐酸、硫酸、苛性ソーダ、苛性カリなどが工業的に用いられています。
塩化亜鉛の場合、原料中の水素や酸素は塩化亜鉛の強力な脱水作用により除かれ、そのあとに微細孔が形成されます。この反応には、脱水、縮合、重合、炭化、酸化等の複雑な過程が含まれています。
ガス賦活
炭化した原料とガス(水蒸気、二酸化炭素、空気、燃焼ガス等)を700~1000℃の温度で反応させると、次に示す炭素の部分反応によって微細孔(直径10~200Å)が生成し、活性炭が製造されます。
- C + H2O → CO + H2(水による賦活)
- C + 2H2O → CO2 + 2H2(水による賦活)
- C + CO2 → 2CO(二酸化炭素による賦活)
- C + O2 → CO2(空気による賦活)
- 2C + O2 → 2CO(空気による賦活)
活性炭の吸着の原理
一般的には表面積が大きい活性炭ほど物質の吸着速度、性能が高いです。吸着作用は界面現象のひとつで、活性炭表面と物質との間に働くファンデルワールス力により吸着されます。
活性炭において界面現象をより強力にしているのが、微細孔による毛管現象です。毛管現象は孔の大きさが小さいほど吸着力を発揮するため、ミクロ孔の発達した活性炭は高い吸着性能を示します。
活性炭の細孔表面は疎水性のため、親水性の物質より疎水性の物質を吸着しやすいです。
活性炭の用途
活性炭は幅広く物質の精製・浄化に使用されています。脱臭、水質浄化、毒物中毒における毒の吸着等をはじめ、食品処理、鉱業、自動車、化学薬品、医薬品、環境保全事業等にも使用されています。
活性炭はPFASを吸着除去することができるため、活性炭やフィルターを使用した浄水器を使用することをおすすめします。
活性炭は買える?
脱臭など様々な用途で活性炭は販売されており、購入可能です。
炭と活性炭の違い
普通の炭にも細孔があり、炭の細孔サイズに応じた物質を吸着することができます。水の汚れなどを除去する目的などで利用されています。
活性炭は炭を賦活処理しているため、炭よりも細孔のサイズが小さく、細孔が多く、比表面積が広いです。活性炭は、賦活によって小さな孔が増えたためより小さな物質まで吸着でき、比表面積が広くなったため吸着能力が高くなります。また、活性炭の表面積の1000〜2000m2/gという値は、小さじ半分ほどの量でテニスコート約4面分の面積となる大きさです。
炭 | 活性炭 | |
細孔サイズ | 約20~60μm | 約1~20nm |
比表面積 | 200~400m2/g | 1000~2000m2/g |