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プロセス化学におけるプロセスパラメータ|製造条件の許容範囲の設定方法

パラメータ プロセス化学

工場で製品を製造するにあたり、収率や品質に影響するパラメータは決められた範囲内で制御します。このパラメータをプロセスパラメータと呼びます。

この記事ではプロセスパラメータを設定するための考え方を説明します。また、各工程のプロセスパラメータの例とプロセスパラメータ設定のための評価項目の一覧を示します。

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プロセスパラメータとは?

プロセス化学におけるプロセスパラメータとは、収率や品質に影響するパラメータのことです。プロセスパラメータは範囲を持って設定され、この範囲が製造条件の許容範囲となります。この範囲も含めてプロセスパラメータと呼ぶこともあります。

工場では多くの製造条件が細かく設定されています。例えば、反応温度は80±5℃、回転数は30±3rpmといったプロセスパラメータが設定されていた場合、工場では反応温度と回転数を決められた範囲内に制御して製造します。

開発品が顧客に採用されて、大量生産するために実験室から工場へ製造場所を変更する際に、プロセスパラメータを設定してから工場での製造を開始します。

会社によりますが、基本的には研究部門生産技術部門でプロセスパラメータを設定し、製造部門では設定されたプロセスパラメータを守って製造します。

プロセスパラメータの設定方法

プロセスパラメータは、次の2点に注意して設定します。

  • 工場の設備で実施可能な条件
  • 収率や品質面で問題ない条件

工場の設備で実施可能な条件

あたりまえですが、工場の設備で実施できない条件では、製造できません。設定可能温度上限と下限温度制御可能幅加熱速度上限徐熱速度上限滴下速度上限と下限撹拌回転数上限撹拌可能粘度上限、など、工場の設備で実施可能な条件をよく確認してプロセスパラメータを設定する必要があります。また、流速計、酸素濃度計、圧力計などの分析装置で計測しながら製造する必要がある場合は、製造前に工事して設置してもらわなければなりません。

研究部門は製造部門とよくコミュニケーションをとることが重要です。

収率や品質面で問題ない条件

プロセスパラメータは根拠を持って設定します。例えば検討の結果、以下の状況となった場合には、反応温度を80±5℃と設定することがあります。

  • 80±5℃は工場の設備で実施可能な温度範囲
  • 工場の設備では±3℃で温度制御可能
  • 70℃以下では反応速度が遅い
  • 90℃以上では副反応が進行して不純物の生成量が増加する

ここで重要なポイントは、プロセスパラメータ設定範囲とNG領域の間に安全域を持たせておくことです。通常は問題なく製造できても、人為的ミス、設備不具合、停電などでプロセスパラメータを外れる可能性があります。そのような場合でも、すぐに品質不良にならないようにするため、安全域を持たせておくことが重要です。つまり、プロセスパラメータの設定範囲は、製造条件の許容範囲より安全域の分だけ狭い範囲とします。

プロセスパラメータの設定

この考え方でプロセスパラメータを設定するためには、複数回の実験をしてOK範囲とNG領域を見極める必要があります。上記の例で説明すると、反応温度を68、72、76、80、84、88、92℃と変えた実験をし、それぞれの結果からOK範囲とNG領域を見極め、プロセスパラメータを設定します。

実験データの取得からプロセスパラメータの設定

補足1 重要なプロセスパラメータはこの例のように丁寧にデータを取って許容範囲を設定します。経験的に許容範囲が広いとわかっているプロセスパラメータは実験数を減らすようなデータどりをします。

補足2 ここでは4℃間隔でデータを取得する例を示しましたが、工程の内容により間隔は調整します。

補足3 ここでは温度を例として説明しましたが、仕込み量、時間、回転数などほかのプロセスパラメータでも同様にいくつかの条件を変えた実験をして、OK範囲とNG領域を見極め、プロセスパラメータを設定します。

各工程のプロセスパラメータ一覧

各工程の典型的なプロセスパラメータ一覧と、プロセスパラメータを設定する際に指標となる評価項目を示します。製品によって重視する指標は変わりますし、この表にはないプロセスパラメータや評価項目がある場合もありますので、この表は参考としてご利用ください。

工程プロセスパラメータの例評価項目
反応原料、溶媒の種類やグレード
仕込み量(原料、溶媒)
仕込み順
仕込み時間(滴下時間)
撹拌翼形状
撹拌回転数
反応温度
反応時間
収率
転化率
不純物量
反応開始から終点までの 原料、目的物、不純物の挙動
化合物の熱安定性
分液溶媒、添加剤の種類やグレード
仕込み量(溶媒、水、添加剤)
分液温度
撹拌翼形状
撹拌回転数
工程収率
不純物量
水層のpH
分液速度
化合物の熱安定性
濃縮濃縮温度
濃縮時間
残液量
撹拌回転数
濃度
不純物量
化合物の熱安定性
共沸脱水共沸温度
共沸時間
残液量
撹拌回転数
水分
不純物量
化合物の熱安定性
蒸留蒸留温度
蒸留時間
残液量
撹拌回転数
不純物量
化合物の熱安定性
晶析溶媒の種類やグレード
仕込み量(溶媒、種晶)
仕込み順
仕込み時間
晶析温度、晶析時間
熟成温度、熟成時間
冷却速度
撹拌翼形状
撹拌回転数
工程収率
不純物量
粒子径
結晶形
濾過濾過器の種類
濾紙・濾布の種類
仕込み量
待機スラリー温度
待機スラリー時間
圧力(加圧濾過)
回転数(遠心分離)
洗浄溶媒の種類
洗浄溶媒量
工程収率
不純物量
Wet率
濾過比抵抗
濾過後のかさ密度
吸着精製吸着剤の種類
吸着剤の量
吸着温度
吸着時間
撹拌翼形状
撹拌回転数
工程収率
不純物量
カラム吸着剤の種類
吸着剤の量
展開溶媒の種類
展開溶媒の量
圧力
カラム精製温度
カラム精製時間・通液速度
工程収率
不純物量
乾燥乾燥方法
仕込み量
乾燥温度
乾燥時間
減圧度
窒素通気速度
残存溶媒
不純物量
結晶形
化合物の熱安定性
粉砕粉砕方法
仕込み量
粉砕時間
粉砕温度
回転数
分級開度
粒子径
粒度分布
各工程のプロセスパラメータ一覧

まとめ

この記事ではプロセスパラメータを設定するための考え方を説明しました。また、各工程のプロセスパラメータの例とプロセスパラメータ設定のための評価項目の一覧を示しました。実際にプロセスパラメータを設定する際に参考にしてください。



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