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ネガ型フォトレジストの種類と開発の歴史をわかりやすく説明

フォトレジスト フォトレジスト

フォトレジストにはポジ型フォトレジストとネガ型フォトレジストの2種類があります。両タイプのレジストは用途・使用箇所により使い分けられます。

この記事では、ネガ型フォトレジストとは何か、ネガ型フォトレジストリソグラフィーの仕組み、ネガ型フォトレジストの種類と開発の歴史についてわかりやすく説明します。

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ポジ型フォトレジストとネガ型フォトレジストの違い

フォトレジストは、露光による溶解性の変化の仕方によりポジ型とネガ型に分けられます。露光によって分解して現像液への溶解性が高くなるレジストがポジ型レジスト、露光によって分子同士が結合(架橋)して現像液への溶解性が低くなるレジストがネガ型レジストです。

つまり、ポジ型レジストは、露光された部分が溶解しやすくなる材料であり、露光された部分が後の工程で除去され、露光されなかった部分が残ります。一方、ネガ型レジストは、露光された部分がが残り、露光されなかった部分が後の工程で除去されます。

ポジ型レジストとネガ型レジスト

ポジ型フォトレジストとネガ型フォトレジストの仕組み

ネガ型フォトレジストのリソグラフィーの仕組みはポジ型と似ていますが、露光部での反応の結果として露光部が現像液に不溶になる(ネガ型)か、現像液に溶解する(ポジ型)かが正反対になります。

ポジ型フォトレジストのリソグラフィーの仕組み

フォトレジスト現像工程
(出典:Semi Journalをもとに著者作成)

ネガ型フォトレジストのリソグラフィーの仕組み

フォトレジスト現像工程_ネガ型
(出典:Semi Journalをもとに著者作成)

ポジ型フォトレジストとネガ型フォトレジストの使い分け

ポジ型フォトレジストとネガ型フォトレジストは、レジストパターンを形成する仕組みの違いにより、異なる用途で使い分けられます。一般的に、ポジ型レジストは細かいパターンの形成に適しており、ネガ型レジストはより太いパターンや、耐久性が求められる場合に適しています。

ポジ型フォトレジストが用いられる用途

  • 高解像度(微細なパターン)が必要な場合

ネガ型フォトレジストが用いられる用途

  • エッチング耐性が求められる場合
  • 耐電圧性や耐熱性が求められる場合
  • 厚いレジスト層が求められる場合

ネガ型フォトレジスト開発の歴史

ポリ桂皮酸ビニルレジスト

初期のフォトレジストは、ポリ桂皮酸ビニルの光二量化反応を利用した、ネガ型パターンを形成するフォトレジストでした。ポリ桂皮酸ビニルレジストは、未露光部は反応しないため現像液(有機溶媒)に溶解しますが、露光部は光二量化反応により高分子同士が架橋して3次元網目構造を形成し、現像液に不溶となります。

ポリ桂皮酸ビニルレジストの現像液には有機溶剤が使用されます。代表的な有機溶剤現像液は、キシレン/エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶液や、酢酸ブチルです。

ポリ桂皮酸ビニルレジストは、KPR型(Kodac Photo Resist)とも呼ばれます。

ポリ桂皮酸ビニルレジストの露光反応

ゴム系レジスト

ポリ桂皮酸ビニルレジストの微細化が限界に近づくと、ポリイソプレンを環化させた環化ゴム系レジストが開発されました。環化ゴム系レジストのベース樹脂はポリイソプレンやポリブタジエンを環化させた環化ポリイソプレンや環化ポリブタジエンで、感光材料はビスアジド化合物でした。

ゴム系レジスト材料の一例

環化ゴム系レジストは、露光によりアジド基が分解してナイトレンとなり、これが環化ゴムの二重結合に付加反応して3次元網目構造を形成し、現像液(有機溶媒)に不溶となります。未露光部は反応しないため現像液へ溶解します。

環化ゴム系レジストはKTFR型(Kodac Thin Film Resist)とも呼ばれます。

ゴム系レジスト材料の露光反応

ゴム系レジストは耐酸性と耐アルカリ性が強い特徴がありましたが、架橋した露光部が現像工程で膨潤するため、微細化には限界がありました。そしてゴム系レジスト以降のg線、i線、KrF、ArF、EUVレジストはポジ型が主流になります。

しかし、ネガ型レジストはウェハーへの密着性やエッチング耐性が高い特徴があるため、比較的解像度を必要としない用途では現在も使用されています。

ネガ型g線、i線フォトレジスト

ネガ型g線、i線フォトレジストは、ノボラック樹脂、ジアゾナフトキノン化合物、メトキシメチル架橋剤、溶剤の混合物です。ポジ型g線、i線フォトレジストには入っていないメトキシメチル架橋剤が入っています。

露光によってジアゾナフトキノン化合物が分解して生成するインデンカルボン酸誘導体が触媒となり、メトキシメチル架橋剤とノボラック樹脂が反応して架橋構造を形成し、現像液に不溶となります。

ネガ型g線、i線フォトレジストの現像液には有機溶剤が使用されます。

ネガ型i線フォトレジスト

メトキシメチル架橋剤の例:架橋させるため、1分子に2以上のメトキシメチル基を有する化合物が使用されます。

メトキシメチル架橋剤の例

ネガ型KrFフォトレジスト

ネガ型KrFフォトレジストは、ポリヒドロキシスチレン(PHS)樹脂、PAG、架橋剤、溶剤の混合物です。ポジ型KrFフォトレジストには入っていない架橋剤が入っています。架橋剤としては、メトキシメチル架橋剤、エステル架橋剤、エステル架橋剤が樹脂に結合したタイプなどがあります。

露光によってPAGが分解して生成する酸が触媒となり、架橋剤とPHS樹脂が反応して架橋構造を形成し、現像液に不溶となります。

ネガ型KrFフォトレジストの現像液には有機溶剤が使用されます。

ネガ型KrFフォトレジスト

エステル架橋剤の例:架橋させるため、1分子に2以上のエステル基を有する化合物が使用されます。

エステル架橋剤の例

ネガ型EUVフォトレジスト

ネガ型EUVフォトレジストは、フェノール性低分子化合物、PAG、メトキシメチル架橋剤、溶剤の混合物です。ポジ型EUVフォトレジストには入っていないメトキシメチル架橋剤が入っています。

露光によってPAGが分解して生成する酸が触媒となり、メトキシメチル架橋剤とフェノール性低分子化合物が反応して架橋構造を形成し、現像液に不溶となります。

ネガ型EUVフォトレジストの現像液には有機溶剤が使用されます。

ネガ型EUVフォトレジスト

フェノール性低分子化合物の例:架橋させるため、1分子に2以上の水酸基を有する化合物が使用されます。

フェノール性低分子化合物の例

まとめ

この記事では、ネガ型フォトレジストとは何か、ネガ型フォトレジストリソグラフィーの仕組み、ネガ型フォトレジストの種類と開発の歴史についてわかりやすく説明しました。



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