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化学増幅型フォトレジストについて化学的に説明|KrFレジスト、ArFレジスト

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化学増幅型レジストは、1個の光量子の感光反応で生成した水素イオンが連鎖的に複数の反応を起こして感度を大幅に向上させるレジストです。化学増幅型レジストの代表例として、KrFレジストとArFレジストの化学構造や光照射による反応についてわかりやすく説明します。

化学増幅型レジストとは?

化学増幅型レジストが開発される前のフォトレジストは、1個の光量子が1個の感光材料と反応するシンプルなメカニズムでした。1982年、IBMから連鎖反応を利用した化学増幅型レジストが提案されました[1]。化学増幅型レジストは、1個の光量子の感光反応で生成した水素イオンが連鎖的に複数の反応を起こして感度を大幅に向上させるレジストです。

化学増幅型レジストはCAR(Chemically Amplified Resist)と英語で表現されることもあります。

感度

リソグラフィーにおいて、少ない露光量・時間でパターン形成できる場合に感度がいい、逆にパターン形成するのに多くの露光量・時間が必要な場合に感度が悪いと言います。つまり感度とは、PAGの反応性を意味します。

感度がよい‗感度が悪い

リソグラフィーの仕組みや、半導体フォトレジスト材料開発の歴史については別記事で紹介しています。

化学増幅型レジストが必要な理由

半導体の高性能化のため、リソグラフィーの光源はg線(436nm)からi線(365nm)へと短波長化して微細化が進められ、その次の世代のKrF(248nm)へと移行しました。しかしKrFの光源に使われるレーザーの出力が小さいため、フォトレジストにはg線やi線用の10倍程度高い感度が求められました。

このように出力が小さい光源に対応するため、化学増幅型レジストが開発されました。KrF以降の短波長の光源(ArF、EUV、EB)ではさらに出力が小さくなるため、KrF以降のレジストはすべて化学増幅型レジストが使用されています。

化学増幅型レジストのメカニズム

一般的なKrFレジストのベース樹脂は、ポリヒドロキシスチレンやポリメタクリル酸エステルで、アルカリ可溶性基のフェノールやカルボン酸の一部を酸分解性の保護基で修飾することにより、アルカリ現像液への溶解性を低減させた樹脂です。そして感光材料には、露光されると酸を発生するPAG(光酸発生剤)を使用します。

KrFレジスト材料の一例

KrFレジストの露光部分ではレジスト中のPAGが分解して酸が発生します。その後のPEB(Post Exposure Bake)と呼ばれる加熱工程で、発生した酸によって保護基が脱保護されます。また、脱保護反応は反応と同時に酸が発生し、発生した酸によってさらに脱保護反応が進行するため、1分子の酸が連鎖的に複数の保護基を脱保護します。

このような仕組みでKrFレジストはひとつの光子から複数の反応を引き起こすことができ、従来レジストと比較して高感度化し、弱い光でもパターン形成が可能となっています。このようにひとつの光子から複数の反応を引き起こすことができるレジストを化学増幅型レジストと呼びます。

フォトレジスト現像工程
(出典:Semi Journalをもとに著者作成)
KrFレジスト材料の露光工程

1分子の酸が連鎖的に複数の保護基を脱保護するイメージ図です。

KrFレジスト材料の化学増幅レジスト

KrFレジスト

KrFレジストの組成

KrFレジストは、ベース樹脂(保護化されたポリヒドロキシスチレン樹脂)、PAG(光酸発生剤)、添加剤、溶剤の混合物です。ベース樹脂はリソグラフィーのエッチング工程でマスクの役割を果たします。PAGは光が照射されると分解して強酸を発生します。発生した強酸はベース樹脂と反応して現像液に不溶だったベース樹脂を現像液に可溶な構造へ変換します。

KrFレジストのベース樹脂の化学構造

一般的なKrFレジストのベース樹脂は、ポリヒドロキシスチレンポリメタクリル酸エステルで、アルカリ可溶性基のフェノールやカルボン酸の一部を酸分解性の保護基で修飾することにより、アルカリ現像液への溶解性を低減させた樹脂です。実際に使用する樹脂はポリヒドロキシスチレンの一部が保護された構造をしています。

KrFレジストのベース樹脂の化学構造と役割

KrFレジストのベース樹脂で使用される保護基はいくつかの種類が知られています。代表的なKrFレジストの構造を紹介します。

KrFレジストのベース樹脂の化学構造

KrFレジストのベース樹脂の保護率

ベース樹脂のPHSは、すべてのフェノール部分を保護せず20~30%程度を保護します。保護されたフェノール部分が多いと、露光しても脱保護しきれない部分が残り、露光部の溶解性が不十分になるためです。

保護率20~30%のPHS樹脂であっても、完全に脱保護した樹脂を比較すると、現像液への溶解速度が1/100程度であり、十分な溶解度差があります[2]。

保護率が高い場合と低い場合はそれぞれメリットとデメリットがあり、求めるレジストの性能に合わせて適切な保護率に調整する必要があります。

保護率が高いほど解像度が高くなります。未露光部での現像液への溶解速度が低下し、露光部との溶解度差が大きくなるためです。逆に、保護基が低いほど感度はよくなります。樹脂は分解させると現像液への溶解度が上がりますが、保護率が低い場合は分解させるべき保護基の量が減り、必要な照射量が少なくなるためです。

 保護率が高い保護率が低い
メリット未露光部での現像液への溶解速度が低下し、露光部との溶解度差が大きくなる。
その結果、解像度が高くなる。
ベース樹脂の保護基を脱保護するために必要な露光量が少なくなる。
その結果、高感度なレジストになる。
デメリットベース樹脂の保護基を脱保護するために必要な露光量が多くなる。
その結果、低感度なレジストになる。
未露光部での現像液への溶解速度が比較的速く、露光部との溶解度差が小さい。
その結果、解像度が低くなる。

KrFレジストのベース樹脂の脱保護反応

各種保護基の脱保護反応を紹介します。いずれの保護基も水素イオンと反応し、反応後は水素イオンを発生させるため、連鎖的に脱保護反応が進行します。

KrFレジストのベース樹脂の脱保護反応

KrFレジストのPAGの化学構造

PAGにはイオン性のPAGと非イオン性のPAGの2種類があります。イオン性PAGは、熱安定性が高く、レジスト溶媒への溶解性が低いです。非イオン性PAGは、熱安定性が低く、レジスト溶媒への溶解性が高く、液浸ArFに使用した場合は水に溶出しにくい特徴があります。

 特徴
イオン性PAG熱安定性高い レジスト溶媒への溶解性低いスルホニウム塩 ヨードニウム塩 など
非イオン性PAG熱安定性低い レジスト溶媒への溶解性高い 液浸ArFで水に溶出しにくいN-ヒドロキシイミドスルホナート オキシムスルホナート など
KrFレジストのPAGの化学構造

一般的なフォトレジストでは、熱安定性に優れているアリールスルホニウム塩が用いられることが多いです。アニオン部に金属、リン、ホウ素を含む化合物を使用すると半導体デバイス作成時の欠陥トラブルの原因となるため、アニオン部にはスルホン酸が主に用いられます。

PAGのカチオン部は主に光を吸収する役割、アニオン部は分解後の酸の役割があります。

KrFレジストのPAGの化学構造と役割

PAGには以下の特性が求められます。

  • 光源の波長における量子収率が高いこと
  • 熱安定性が高いこと
  • 露光後はアルカリ現像液への溶解性が高いこと
  • レジスト溶剤に対する溶解性が高いこと
  • 発生した酸が拡散しすぎないこと

PAGは多いほど、照射量あたりの酸発生量が多くなり、感度が向上します。ただしPAGが多すぎると、PAGから発生するフェニルラジカルによる樹脂の架橋反応が起こります。つまりPAGの量には最適範囲があります。

PAGはいくつかの種類が知られています。代表的なPAGの構造をカチオン部とアニオン部に分けて紹介します。イオン性PAGはカチオン部とアニオン部の組み合わせです。

イオン性PAG(カチオン部)の化学構造例:カチオン部は光を吸収して酸を発生させる役割を担います。

イオン性PAG(カチオン部)の化学構造例

イオン性PAG(アニオン部)の化学構造例:アニオン部はPAGが分解して発生する酸の部分になります。PAGから発生する酸のpKaが小さいほど保護基との反応性が高く、脱保護反応させやすくなります。

イオン性PAG(アニオン部)の化学構造例

非イオン性PAGの化学構造例

非イオン性PAGの化学構造例

KrFレジストのPAGの酸発生メカニズム

PAGの酸発生メカニズムはいくつかルートがあると考えられています。いずれのルートでも、最終的にはPAGが分解して酸が発生します。

イオン性PAGの酸発生メカニズム

イオン性PAGの酸発生メカニズム

非イオン性PAGの酸発生メカニズム

非イオン性PAGの酸発生メカニズム

KrFレジストの添加剤 クエンチャー

KrFレジストには、酸と反応する含窒素有機化合物が含まれています。含窒素有機化合物は、PAGから発生する酸がレジスト膜中に拡散する際の拡散速度を抑制し、リソグラフィー工程の解像度を向上させる役割があります[3]。添加する含窒素有機化合物は酸をクエンチして拡散を防ぐ化合物のため、クエンチャーと呼ぶことがあります。

含窒素有機化合物としては例えば、脂肪族アミン類、芳香族アミン類、含窒素芳香族化合物、アミド化合物などが使用されます。

KrFレジストの添加剤 界面活性剤

KrFレジストには、界面活性剤が含まれている場合があります。界面活性剤は、フォトレジストの塗布性を改善する役割があります[*]。

界面活性剤としては非イオン性化合物がよく使用されます。例えば、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、含フッ素オルガノシロキサン系化合物などが使用されます。

KrFレジストの添加剤 溶解阻止剤

KrFレジストには、溶解阻止剤が含まれている場合があります。溶解阻止剤は、フォトレジストの露光部では現像液への溶解性を促進し、非露光部では現像液への溶解性を阻止する役割があります[*]。

溶解阻止剤としては、分子量が100~1,000のフェノール性水酸基またはカルボニル基を2つ以上有する化合物で、フェノール性水酸基またはカルボニル基を酸分解性保護基で一部またはすべて保護した化合物です。

溶解阻止剤としては例えば以下に示す化合物などが使用されます(R”は酸分解性保護基で、酸分解性保護基はKrFレジストのベース樹脂の保護基と同じ)。

溶解阻止剤

KrFレジストの塗布、露光、現像工程の環境

化学増幅型レジストは、少ない酸で数多くの反応を引き起こすものです。そのため、酸濃度が変化する何らかの作用があれば、パターン形状に大きく影響します。例えば、空気中に微量のアンモニアなど塩基性化合物があると、基板表面付近では露光部で酸による脱保護が十分進行せず現像液に対する溶解が不十分となり、パターン形状が悪くなります。この対策として、塗布、露光、現像工程では、クリーンルーム内に流通する空気をケミカルフィルターに通します。

KrFレジストの塗布、露光、現像工程のベーク

KrFレジストでは塗布、露光、現像工程で3回ベークします。ベーク温度はいずれも100℃前後です。

 工程目的
プリベークレジスト塗布後・塗布後のレジストに含まれる有機溶剤成分を乾燥除去する
ポストエクスポージャーベーク(PEB)露光後・酸と保護基を反応させる
・定在波によってできたレジスト膜の凹凸を緩和する
ポストベーク現像後・現像後にレジスト膜表面に残った現像液を乾燥除去する
・残った反応剤を熱によって反応させることで、密着性とエッチング耐性を向上させる
フォトレジスト現像工程
(出典:Semi Journalをもとに著者作成)

プリベーク温度はレジスト膜中の残存溶媒を減少させるために一定以上の温度が必要ですが、高すぎると残存溶媒が減少しすぎて酸の拡散距離が短くなり、脱保護反応の効率が低下(=感度が低下)してしまいます。

PEB温度はPAGから発生した酸と保護基を反応させるために一定以上の温度が必要です。PEB温度を上げると脱保護反応の効率が向上(=感度が向上)すると同時に、酸が拡散して解像度が低下するため、適切な温度に調整します。PEB温度が高すぎるとPAGのオニウム塩からフェニルラジカルが発生してペース樹脂が架橋し、露光部が不溶化して解像度が低下してしまいます。

プリベーク温度とPEB温度が、感度と解像度に与える影響をまとめると以下の表のようになります。

 感度(脱保護反応効率)を上げるためには解像度(酸の拡散距離の短さ)を上げるためには
プリベーク温度低くする高くする
PEB温度高くする低くする

定在波効果を緩和するPEB

定在波効果とは、露光した光の波の性質によって現像後のフォトレジストが波の形になる現象です。

露光した光はフォトレジスト膜中に入射した後にウェハーで反射します。この入射光と反射光がレジスト膜中で干渉し、レジスト膜の深さ方向に光学強度の濃淡が周期的に生じます。その結果、フォトレジストの光反応パターンも周期的な波の形が反映される現象です。

定在波効果によって形成された波の形のパターンは、PEBによって平坦なパターンに緩和することができます。

定在波効果を緩和するPEB

ArFレジスト

ArFレジストはKrFレジストと同じ化学増幅型レジストです。KrFレジストの項目で説明した内容の多くはArFレジストでも同様です。この項目では、KrFレジストと異なる部分に限定してArFレジストの説明をします(KrFレジストで説明してArFレジストで説明していない部分は、KrFレジストと同様のため省略しています)。

ArFレジストのベース樹脂の化学構造

ArF光源は波長が193nmで、ベンゼン環構造に吸収されます。そのためKrFレジストのベース樹脂であるポリヒドロキシスチレン構造はArFレジストでは使用できず、ArFレジスト用にベンゼン環を含まないベース樹脂が必要になりました。様々な検討の結果、193nmの光透過率が高いポリメタクリル酸エステル樹脂が用いられるようになりました。

ベース樹脂への要求特性のひとつに、リソグラフィーのエッチング工程での耐性があります。KrFレジストまではベース樹脂はエッチング耐性のあるベンゼン環構造を有していました。ArFレジストではエッチング耐性を持たせるため、ベンゼン環構造に代わってアダマンタンなどの脂環式構造が用いられます。また、ベース樹脂は基板への密着性も必要で、極性官能基を有している構造が使用されています。

一般的なArFレジストのベース樹脂は、ポリメタクリル酸エステルで、エステル部分が酸分解性の保護基となっています。保護された状態はアルカリ現像液に不溶で、酸によって脱保護されるとアルカリ現像液へ可溶になります。

ArFレジストのベース樹脂の化学構造と役割

ArFレジストのベース樹脂で使用される保護基はいくつかの種類が知られています。代表的なArFレジストの構造は、以下の繰り返し単位が数種類含まれた共重合体です。

ArFレジストのベース樹脂

ArFレジストのベース樹脂の脱保護反応

例えば、アダマンタン構造のモノマーの場合、酸と反応して現像液(アルカリ水溶液)に可溶または洗い流せる構造に変換されます。

ArFレジストのベース樹脂の脱保護反応

ArFレジストのPAGの化学構造

ArFレジストでは光源波長の変更に加え、パターンの微細化など要求性能も非常に厳しくなり、PAGに求められる機能も複雑になりました。KrFレジストで使用されたトリフェニルスルホニウム塩は193nmにおいて芳香環由来のモル吸光係数が高すぎるため、ArFレジストではレジストパターンが悪化します。適切なモル吸光係数を持たせるため、フェニル基の代わりに、脂環式構造、脂肪族カルボニル、芳香族カルボニル、ナフチル基などを持つスルホニウム塩が開発されました。モル吸光係数の低いPAGは同一露光条件では酸発生量が小さくなりますが、添加量を増やしてもレジスト膜の透明性を損なわないため、高い透明性と高感度を両立できます。

また、樹脂の保護基はKrFレジストのアセタールからArFレジストでは3級アルキルエステルに変わり反応性が低下しました。そのためArFレジスト用PAGではフッ素化アルキルスルホン酸など強い酸を発生するアニオンが使用されます。

PAGはいくつかの種類が知られています。代表的なPAGの構造をカチオン部とアニオン部に分けて紹介します。イオン性PAGはカチオン部とアニオン部の組み合わせです。

ArFレジストのイオン性PAG(カチオン部)の化学構造例

ArFレジストのイオン性PAG(カチオン部)の化学構造例

ArFレジストのイオン性PAG(アニオン部)の化学構造例

ArFレジストのイオン性PAG(アニオン部)の化学構造例


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関連書籍

参考文献

  • [1] H. Ito, C.G. Willson, J.M.J. Frechet, Digest of Technical papers of 1982 Symposium on VLSI Technology, 86 (1982)
  • [2] RADIOISOTOPES, 2017, 66, 557–566 (https://doi.org/10.3769/radioisotopes.66.557)
  • [3] 特開2008−111103
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