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リチウムイオン電池の「負極材」の種類と特徴を化学的に説明|有力な負極材メーカーも紹介

石油コークスとグラファイト リチウムイオン電池

リチウムイオン電池の負極材は、電池容量や電圧を決める主要な部材です。この記事では、リチウムイオン電池の負極材の種類と特徴を化学的に説明し、有力な負極材メーカーも紹介します。

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負極材の種類と特徴

リチウム

リチウム金属は比容量(3.86 Ah/g)が大きいため高いエネルギー密度となり、エネルギー準位が高いため高い電圧を達成できる、理想的な負極材です。ただし、Li/Li+の電気化学ポテンシャルは電解質化合物の最低空分子軌道(LUMO)より上にあり、電極表面被膜(SEI)が形成されない限り連続的に電解質を反応させます。また、リチウム金属は充電/放電のサイクルで体積変化が2倍と大きく、SEIが形成されたとしてもSEIが損傷を受けてリチウム金属の表面で不均一に修復されます。これが原因でリチウムデンドライトが成長してセルが短絡し発火する可能性があるため、リチウム金属は負極材として使用するのが困難です。

石油コークス

石油コークスは石油分留残渣から得られるグラファイト化度の低い炭素で、リチウムイオンや電解質を安定に挿入/脱離させることができます。この性質を利用して、石油コークスはリチウムイオン電池の世界初の市販品で負極に用いられました。当時は、グラファイトを負極に使用すると電解質であるプロピレンカーボネートが挿入してグラファイトの剥離と崩壊が引き起こされる問題がありましたが、石油コークスは非晶質炭素領域があるためにこの問題は起きませんでした。

グラファイト

グラファイトの比容量(372 mAh/g)は石油コークスの比容量(186 mAh/g)より大きいため、グラファイトを使用するための検討は続けられていました。電解質の項目で説明したとおり、電解液としてECを使用することでグラファイトの剥離を抑制できるようになり、グラファイトを使用できるようになりました。現在ではグラファイトが負極の標準物質となっています。

石油コークスとグラファイト
石油コークスとグラファイトにリチウムイオン(青玉)が挿入されている図

シリコン

シリコンは天然に多く存在する元素であり、既知の材料の中で最も高い比容量(4200 mAh/g)を有しているため、グラファイトに代わる可能性がある有望な負極材です。

しかし、シリコンは充放電による体積変化が大きく、負極材料の構造が破壊されたり、SEIが破壊されてリチウムデンドライトの成長起点になったり、電極と集電体との接点がなくなったりして電池性能を低下させます。この問題を解決するため、シリコンをナノサイズの粒子として使用する方法や、グラファイトとの複合材料にする方法が検討されています。

負極材の特徴

負極材メーカー

負極材の中で最もメジャーなグラファイト負極材メーカーを紹介します。グラファイト負極材メーカーは上位4社がすべて中国企業で、BTR(中国)、江西紫農(中国)、上海杉杉(中国)、広東凱金(中国)です。その次にレゾナックが続きます。三菱ケミカルも負極材を製造しています。

負極材
(出典:富⼠経済「電池関連市場実態総調査」2020)

原料であるグラファイトの埋蔵量は約3.3億トンで、トルコブラジル中国マダガスカルモザンビークに多く偏在しています。生産量が多いのは、中国モザンビークマダガスカルです。

埋蔵量

グラファイト埋蔵量
(出典:USGS 2023

産出量

グラファイト産出量
(出典:USGS 2023

グラファイトには天然グラファイトと合成グラファイトがあり、およそ2/3は合成グラファイトが利用されています。合成グラファイトは電極、鉄鋼、電池用途に使用され、天然グラファイトは耐火物、電池用途に使用されます。(出典:カナダ政府

まとめ

この記事では、リチウムイオン電池の負極材の種類と特徴を化学的に説明し、有力な負極材メーカーも紹介しました。

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参考文献

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