G-B8ZBWWKGWV
PR

活性炭によるCO2の吸着分離|賦活化と表面改質の工夫によるCO2吸着性能向上

活性炭によるCO2吸着分離 カーボンリサイクル

活性炭は様々な用途で用いられる吸着材ですが、CO2を分離・回収するための効果的な吸着材としても開発が進められてきました。活性炭は、原料、炭化方法、賦活方法、表面改質方法などによりCO2吸着性能が変わります。

この記事では、活性炭によるCO2吸着のメカニズムを説明します。また、活性炭のCO2吸着能力向上の方法として、賦活方法の工夫や表面改質の工夫の実例を紹介します。

スポンサーリンク

CO2吸着材としての活性炭

活性炭は、ヤシ殻、石炭、木屑などの原料となる炭素物質を炭化・賦活することで直径1~20nmの細孔を大量に形成させた、炭素を主な成分とする多孔質材料です。活性炭の細孔は様々な大きさのものが分布していますが、他の多孔質材料と比較して活性炭の特徴はミクロ孔が多いことです。

CO2を物理吸着させる吸着材としては活性炭、ゼオライト、シリカゲル、活性アルミナ、金属酸化物、金属有機構造体(MOF)など様々な材料が利用できます。これらの吸着材のうち、活性炭は多くの利点を備えています[1-3]。主な利点を6つ示します。

  • 比表面積が大きい:活性炭は一般的に比表面積が大きいため、吸着部位が多く、CO2吸着能力が高いです。
  • ミクロ孔が多い:ミクロ孔はCO2を吸着しやすいサイズの細孔であるため、CO2吸着材として活性炭は有力な材料のひとつです。
  • 構造調整可能:原料、炭化方法、賦活方法、を変更することで活性炭の細孔サイズや表面官能基を調整し、CO2吸着能力を最適化することができます。
  • 安定性:活性炭の多くはさまざまな環境下で優れた安定性を示し、長期間にわたって吸着性能を維持できます。
  • 低い環境負荷:活性炭はバイオマスや廃棄物から製造できるため、持続可能なライフサイクルと最小限の環境負荷を実現できます。
  • リサイクル可能性:活性炭は、性能を大幅に低下させることなく何度も再生・再利用できます。

活性炭の表面には、カルボニル基、ヒドロキシル基、エーテル基、ケトン基、アミノ基などさまざまな官能基が含まれていることがあります。これらの官能基は、水素結合やファンデルワールス力を介してCO2を吸着しやすくします。

さらに、これらの官能基を足掛かりに改質剤と反応させて新しい化学結合を形成し、よりCO2と強く相互作用する活性部位を導入することもできます[4-6]。

活性炭の吸着メカニズム

CO2が活性炭に吸着されるプロセスは次の3工程にわけられます。

  1. 外部拡散工程:CO2分子が吸着材表面に到着します。
  2. 内部拡散工程:CO2分子は活性炭の細孔内を拡散します。
  3. 吸着工程:CO2分子は活性炭の細孔内の吸着サイトに吸着されます。

CO2の外部拡散速度は、活性炭の比表面積が大きいほど早くなります。CO2の内部拡散速度は、活性炭の細孔の直径と容積が大きいほど早くなります。CO2の吸着速度は、活性炭の吸着サイトの量が大きいほど早くなります。そのほかにも活性炭の特徴によってCO2の吸着能力は変化します。

  • 比表面積:比表面積が大きいほど、吸着サイトが多くなり、CO2の吸着容量が増加します。
  • ミクロ孔:ミクロ孔(<2nm)容積が大きいほど、CO2吸着サイトが増えて吸着能力が高くなります。
  • メソ孔:メソ孔(2~50nm)容積が大きいほど、CO2分子の内部拡散速度が増加します。
  • 細孔構造:細孔の接続性が良ければ、CO2分子の内部拡散速度が増加します。
  • 表面官能基:カルボニル基、ヒドロキシル基、エーテル基、ケトン基、アミノ基など表面官能基の種類と量はCO2吸着能力に大きく影響します。一部の官能基は、CO2分子と水素結合または非共有結合相互作用によって吸着能力を増加させます[7-8]。また、一部の官能基は部分的に極性の高い活性点をつくり、CO2以外のN2やCH4などに対するCO2の選択吸着性を高めます。

活性炭によるCO2吸着の研究例

活性炭はそのままでもCO2を分離・回収するために使用することができますが、賦活化方法を工夫したり表面改質をすることでCO2吸着能力を向上させたり、CO2以外のN2やCH4などに対するCO2の選択吸着性を高めることができます。

活性炭の賦活化の工夫によるCO2吸着能力向上

活性炭の比表面積や細孔容積は大きいほどCO2吸着能力が高くなります。

活性炭の賦活化方法とCO2吸着能力を比較した研究では、熱/KOHによる賦活と比較して、マイクロ波/KOHによる賦活では、細孔容積が増加し(0.28 cm3/g → 0.37 cm3/g)、比表面積が増大した(422 m2/g → 602 m2/g)ことにより、CO2吸着能力が向上(298K, 0.1MPa条件で3.44 mmol/g → 4.21 mmol/g)することがわかりました。

活性炭の表面改質の工夫によるCO2吸着能力向上

CO2は酸性ガスのため、活性炭にN原子を導入すると塩基点が形成され、CO2吸着能力が向上します[9-10]。活性炭に新たな原子を導入して改質する方法には、機能性原子を含む溶液に活性炭を浸漬させる「浸漬導入法」と、機能性原子を含む原料を炭化させて活性炭中に機能性原子を残す「原料導入法」があります。

浸漬導入法

ある研究では、活性炭を有機アミンに浸漬させる表面改質をすることで、表面改質前と比較してCO2吸着が348K, 0.1MPa条件で0.09 mmol/gから1.02 mmol/gへと向上させることに成功しました[11]。

ジアミンに浸漬させて表面改質した活性炭は、見改質の活性炭と比較してCO2吸着容量が低くなりましたが、アミノ基を導入したことによりCO2の選択的吸着能力が向上しました[12-13]。

このように浸漬による表面改質の欠点は、吸着サイトが浸漬分子によりブロックされてCO2吸着容量が減少することです。

活性炭を酢酸に浸漬させた研究では、カルボキシル基とヒドロキシル基が活性炭表面の極性と高め、それによってCO2の吸着を促進しました[14]。

Exploring a New Method to Study the Effects of Surface Functional Groups on Adsorption of CO2 and CH4 on Activated Carbons

活性炭を希釈フッ素ガスで修飾した研究では、非晶質炭素が分解して活性炭上に微細孔が形成され、CO2吸着容量が向上することが発見されました[15]。さらに、極性のC-F結合によってCO2吸着能力も向上しました。

Selective and enhanced CO2 adsorption on fluorinated activated carbon fibers

原料導入法

活性炭の原料を炭化する工程で尿素を加えて、活性炭にN原子をドープすると、CO2吸着に寄与する-NH官能基が増加し、さらに細孔容積と比表面積が増加し、CO2吸着能力が向上しました[16]。同時に、Nドープ活性炭は吸着-脱着におけるサイクル安定性も高いことがわかりました。吸着-脱着サイクルを10回繰り返しても、CO2吸着能力はわずか1.31%しか低下しませんでした。

The development of activated carbon from corncob for CO2 capture

ポリエチレンイミンを原料として炭化させた活性炭は、高いCO2吸着容量を示しました[17]。これは、炭素表面の塩基性官能基の数が炭素のCO2吸着容量に影響しているためです。

また、レゾルシノールとホルムアルデヒドを、硫酸や硝酸やリン酸を用いて重合させ、それぞれS、N、P原子を含ませたノボラック樹脂を合成し、これらを原料に炭化して、S、N、P原子をドープさせた活性炭を検討した研究もあります[18]。この中では、S原子をドープした活性炭が、298K, 0.1MPa条件で3.60 mmol/gと高いCO2吸着能力を示しました。これは非ドープ活性炭と比較して39.5%のCO2吸着能力増加でした。

Influence of doping nitrogen, sulfur, and phosphorus on activated carbons for gas adsorption of H2, CH4 and CO2

今後の課題

CO2吸着選択性

活性炭はCO2吸着能力が高いですが、CO2と同時にほかのガス(NOx、SOx、H2Oなど)も同時に吸着しやすいです。表面改質の工夫によって選択性を向上させることができますが、さらに技術革新が必要です。

低コスト

CO2吸着能力やCO2選択性など、活性炭の性能を上げるために賦活方法や表面改質方法を工夫すると、活性炭製造コストが増加します。商業運転可能な程度に、低コストで高性能活性炭を製造する必要があります。

高い安定性

商業生産のためには、コストと同様に活性炭の繰り返し耐久性も求められます。

関連文献

タイトルとURLをコピーしました