PR

高純度フッ化水素メーカーの世界シェアとランキング|日本企業が強い

フッ化水素メーカー フッ素化学

半導体材料の中で、日本が圧倒的な存在感を持つ領域のひとつが高純度フッ化水素(フッ酸)です。フォトレジストやフッ化ポリイミドと並び、2019年の対韓輸出規制で注目されたこの材料は、今も世界シェアの7〜8割を日本勢が寡占しています。この記事では、高純度フッ化水素メーカーの世界シェアや、各メーカーの特徴を説明します。

スポンサーリンク

フッ化水素の純度と用途

フッ化水素は純度によって用途が変わります。この記事では特に「12N」と呼ばれる高純度フッ化水素について注目します。

純度レベル表記(ナイン)主な用途・適用分野特徴・要求水準
99%〜99.9%2N~3N産業用一般化学品、金属の酸洗浄、ガラスの加工・エッチング、フッ素樹脂の原料工業用レベル。不純物除去の難易度は低く、一般的な化学工場で製造・供給が可能。
99.99%〜99.999%4N〜5N太陽電池(ソーラーパネル)製造、液晶ディスプレイ(LCD)パネルのガラス洗浄エレクトロニクス向けだが、半導体ほどの超高純度は求められない。新興国メーカーの参入も多い領域。
99.9999%6N汎用半導体(レガシープロセス)の洗浄・エッチング自動車用ECUや家電向けなど、比較的世代の古い半導体製造プロセスで使用されるレベル。
99.9999999999%12N最先端半導体(先端ロジック・3D NAND・HBMなど)の超微細回路エッチング・洗浄12Nと呼ばれる極限の純度。日本企業が世界市場をほぼ独占している。

高純度フッ化水素メーカーの世界シェア

世界でも超高純度フッ化水素を製造できるメーカーは10社程度しかありません。これらのメーカーの世界シェアと特徴を一覧表にまとめました。

企業国籍推定シェア証券コード特徴
ステラケミファ日本約50〜60%東証: 4109高純度化の技術力と年間10万トンの供給能力の高さにより世界首位。
ダイキン工業日本約10~15%東証: 6367エアコンの冷媒を中心にフッ素化学品全般に強み。フッ素化学品の原料であるフッ化水素も生産。
森田化学工業日本約10~15%未上場日本で初めてフッ化水素を商業化。リチウムイオン電池向け材料など様々なフッ素系製品を展開。
SoulBrain韓国10%未満KOSDAQ: 357780半導体向け高純度フッ素化学品やリチウムイオン電池向け材料を供給する韓国トップメーカー。
Do-Fluoride(多氟多新材料)中国10%未満SHE: 002407リチウムイオン電池向け材料で世界トップシェア級。半導体向け高純度フッ素化学品も提供。
Solvayベルギー10%未満EBR: SOLBベルギー発祥のグローバル化学メーカー。先端材料と特殊化学品に強み。
Fujian Yongjing(福建省永晶科技)中国5%未満未上場フッ化水素、フッ素化学品を自社生産。年間5万トンの生産能力は中国でトップクラス。
Juhua Group(巨化集団)中国5%未満SSE: 600160フッ化水素、フッ素化学品を自社生産。フッ素化学品やエアコンの冷媒生産において中国最大規模。
Honeywellアメリカ5%未満NASDAQ: HONコングロマリットであるハネウェルの化学部門は、高付加価値な特殊化学品や高機能素材に特化。
Mexichem Fluorメキシコ5%未満未上場フッ化水素の原料鉱石の採掘で世界最大級。フッ化水素やフッ素化学品まで一気通貫のサプライチェーン。

高純度フッ化水素メーカーの特徴

ステラケミファ

ステラケミファは、半導体製造に欠かせない世界最高水準の超高純度フッ化水素酸などを手掛ける、フッ素化合物の世界的リーディングカンパニーです。
半導体の微細化・多層化に不可欠な「12N(99.9999999999%)以上」という世界最高水準の超高純度フッ化水素酸の精製に成功しており、約50~60%の高い世界シェアを持っています。

ダイキン工業

ダイキン工業は、空調分野で世界売上No.1を誇るグローバルな空調・化学メーカーです。
1935年に日本初となる冷媒用フルオロカーボンガスの開発を始めて以来、長年技術を磨いてきました。自動車や半導体、エレクトロニクスなど幅広い分野で活用されています。

森田化学工業

森田化学工業は、日本で初めてフッ化水素酸の商業生産に成功した、100年以上の歴史を持つ無機フッ素化学のパイオニア企業です。
1917年の創業以来、約1世紀にわたりフッ素化合物の研究開発と製造を手がけています。安定した原料確保のため、中国の合弁会社でフッ化水素酸を生成し輸入・加工する安定した生産体制を持っています。

SoulBrain

Soulbrain(ソウルブレイン)は、半導体、ディスプレイ、リチウムイオン電池などの先端IT産業に不可欠な高純度化学品を開発・製造する韓国の化学メーカーです。
韓国での半導体材料の国産化を掲げて成長し、Samsung ElectronicsやSK hynixをはじめとする世界トップクラスの半導体メーカーに製品を供給しています。

Do-Fluoride(多氟多新材料)

Do-Fluorideは無機フッ素化学品分野で世界をリードし、リチウムイオン電池用電解質などの新エネルギー材料を手がける中国の国家ハイテク企業です。

フッ素、リチウム、ケイ素の化学品に特化。無機フッ素材料業界では世界トップクラスの生産能力と技術力を持っています。リチウムイオン電池向け材料で世界トップシェア級。

高純度フッ化水素の市場規模

高純度フッ化水素の市場規模は2025年に約11億8000万米ドルと評価され、2026年には13億1000万米ドル、2035年に約34億7000万米ドルに達すると予想されています。2026年から2035年までのCAGRは11.4%です。(出典:Global Electronic Grade Hydrofluoric Acid Market 2026 – 2035, Custom Market Insights)

フッ素化学の全体像

フッ素化学の全体像を見ると、すべてのフッ素化合物は蛍石(CaF2)から製造されるフッ化水素を通っており、フッ化水素が重要物質であることがわかります。

フッ素化合物は安定性、耐熱性、耐薬品性、絶縁性等に優れた特徴を生かして、フッ素系冷媒(エアコンなどの冷媒)、フッ素樹脂(フライパン、輸送機器のオイルシール、軸受、精密機械、電子基板など)、フッ化水素酸(半導体プロセス、液晶ガラスの薄化、ステンレス製造用洗浄剤)、HPF6(リチウムイオン電池用電解質)など幅広い用途で使用されています。

蛍石はCaF2含有量が97%を超えるアシッドグレードと97%以下の冶金・セラミックグレードに分けられ、フッ化水素はアシッドグレードから製造されます。

フッ素化学系統図

蛍石から製造されるフッ化水素は、フッ素ガス、フッ素系冷媒、フッ素樹脂、フッ化水素酸、HPF6、BF3等の様々なフッ素系化合物の原料になります。

フッ化水素の性質

物理的特性

フッ化水素は融点が-84℃、沸点が20℃、密度が0.92です。水、エタノール、トルエン等に溶解します。フッ化物イオンのイオン半径が小さく水素イオンとの静電引力が強いため電離しにくく、水溶液は弱酸性になります。強い水素結合によって分子間相互作用が強いため、沸点が他のハロゲン化水素と比較して高いです。

フッ化水素はガラス等に含まれるケイ酸SiO2と反応して、ヘキサフルオロケイ酸 H2SiF6 を生じ、ガラスや半導体酸化膜のケイ酸SiO2を溶かします。この性質を利用して半導体製造プロセスのエッチングが行われます。フッ化水素はガラス容器で保管できないため、ポリエチレンやフッ素樹脂容器が使用されます。

毒性

フッ化水素の経口最小致死量は1.5gあるいは体重あたり20mg/kg、無水フッ化水素酸フュームの致死濃度は5分で50~250 ppmであり、取り扱いには注意が必要です。

法規情報

フッ化水素は、毒物及び劇物取締法で医薬用外毒物に、労働安全衛生法で第2類特定化学物質に指定されており、取り扱いには厳重に注意が必要です。ウラン濃縮やサリンなど毒ガスの製造にも使用可能なため、輸出が統制される品目であり、日本では外国為替及び外国貿易法によって経済産業大臣の許可なく輸出することが禁止されています。

フッ化水素の製造方法

蛍石(CaF2)からフッ化水素(HF)を製造する反応式を示しす。

化学式

CaF2 + 2 H2SO4 -> 2 HF + CaSO4

具体的には、まず蛍石を発煙硫酸で脱水し、蛍石と濃硫酸を加熱連続回転炉(ロータリーキルン)で加熱混合してフッ化水素ガスを取り出します。

フッ化水素の原料(蛍石)

蛍石の埋蔵量はメキシコ、中国、南アフリカ、モンゴルが多いですが、生産量は中国が50%を超える高いシェアで、メキシコ、モンゴル、南アフリカ、ベトナムが続きます。

蛍石の埋蔵量と生産量
(出典:エネルギー・金属鉱物資源機構)

蛍石は主成分のCaF2のほか、SiO2、CaCO3、PやAs等の不純物が含まれていますが、不純物を多く含む蛍石はフッ化水素の製造には不向きです。

不純物が少なく高純度なアシッドグレードの蛍石は主に中国産、純度の低い冶金・セラミックグレードはメキシコ産が中心のため、日本の主な需要であるフッ化水素向けでは中国産に依存しています。

蛍石の輸入相手国
(出典:エネルギー・金属鉱物資源機構)

冶金・セラミックグレードは CaF2 含有量が 97%以下の塊鉱であり、製鉄分野で転炉や電炉の融剤として使用されます。

関連書籍

まとめ

半導体用高純度フッ化水素の世界シェアは日本勢が約7〜8割を占めます。特にステラケミファが約5割を握り、ダイキン工業・森田化学工業が続いている状況です。

高純度フッ化水素の市場規模の成長予測、韓国・中国勢の追い上げ、蛍石の中国依存リスクまで説明しました。

タイトルとURLをコピーしました