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ホルムズ海峡が封鎖されると肥料を輸入できなくなる理由を化学式で説明!

ホルムズ海峡が封鎖されると肥料を輸入できなくなる理由を化学式で説明 化学製品

アメリカとイスラエルがイランを攻撃したため、イランがホルムズ海峡を封鎖する対抗処置を取りました。ホルムズ海峡は原油の大動脈として良く知られていますが、実は肥料の大動脈でもあります。

なぜ中東が肥料の輸出大国なのか、化学的に説明します。

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なぜ中東が肥料の輸出拠点なのか?

肥料として使用される主要な3つの栄養素は、窒素、リン、カリウムです。特に窒素肥料はタンパク質や葉緑素を作る基盤で、2023年の世界肥料消費量の約59%を占める主役です。その他、リン酸肥料は21%、カリウム肥料は20%でした。

中東では窒素肥料を生産するためのメタンと、リン酸肥料をつくるための硫黄が大量かつ安価に生産されるため、中東は肥料の輸出大国となっています。その結果、世界の肥料輸出量の20~30%がホルムズ海峡を通過しています。

窒素肥料の工業的製法

工業的な窒素肥料の製造方法は、大きく3ステップに分解できます。

  1. メタンと水蒸気を水蒸気改質して水素を製造する
  2. この水素と空気中の窒素からハーバー・ボッシュ法でアンモニアを製造する
  3. アンモニアを原料として各種窒素肥料を製造する

メタンと水蒸気を水蒸気改質して水素を製造する

まず、天然ガス(主成分:メタン)から硫黄化合物を除去します。硫黄化合物は後の工程で使用する触媒を不活性化するためです。硫黄化合物を気体状の硫化水素に変換する触媒的水素化反応によって硫黄を除去します。

H2 + RSH → RH + H2S (Rはアルキル基)

硫化水素は酸化亜鉛の層を通過させることで硫化亜鉛に変換されて吸着除去されます。

H2S + ZnO → ZnS + H2O

次に、脱硫した天然ガス(メタン)をニッケル等の金属触媒の存在下で水蒸気と高温で反応させて、水素と一酸化炭素を主成分とするガスに水蒸気改質します。

CH4 + H2O → CO + 3H2

水蒸気改質後のガスには主成分である水素のほかに、一酸化炭素、二酸化炭素などが含まれます。一酸化炭素は、さらに水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素に転化します。二酸化炭素はその後の工程で除かれます。

CO + H2O → CO2 + H2

二酸化炭素はアンモニア合成には不要なため、脱炭酸工程で除去されます。二酸化炭素を除去する方法は、熱炭酸カリウム溶液やエタノールアミン溶液などを用いる化学吸収法と、メタノールなどを用いる物理吸収法があります。炭酸カリウムによる化学吸着法では以下の反応が進行します。

K2CO3 + CO2 + H2O → 2KHCO3

水素と空気中の窒素からハーバー・ボッシュ法でアンモニアを製造する

ハーバー・ボッシュ法は、水素と、空気から分離した窒素を高温高圧で反応させてアンモニアを生成する反応です。エネルギー消費量が大きな製法ですが、世界のアンモニアの大部分はハーバー・ボッシュ法で製造されます。

3H2 + N2 → 2NH3

アンモニアを原料として各種窒素肥料を製造する

窒素肥料には様々な種類がありますが、いずれもアンモニアを原料に製造されます。

窒素肥料の代表例

  • 硫酸アンモニウム(硫安)(NH3)2SO4
  • 塩化アンモニウム(塩安)NH4Cl
  • 硝酸アンモニウム(硝安)NH4NO3
  • 尿素 CO(NH2)2
  • カルシウムシアナミド(石灰窒素)CaCN2

中東諸国は、採掘した天然ガスをそのまま輸出するだけでなく、自国内のプラントで化学反応させ、付加価値の高い尿素アンモニアに加工して輸出しています。

尿素の工業的製造方法

尿素の工業的製造方法は、主にアンモニアと二酸化炭素を原料とし、高温・高圧下で反応させるアンモニア・カーバメート直接合成法が用いられます。

第1工程ではアンモニアと二酸化炭素を高圧下で反応させ、カルバミン酸アンモニウムを製造します。

2NH3 + CO2 → NH2COONH4

第2工程では生成したカルバミン酸アンモニウムをさらに分解・脱水して、尿素を製造します。

NH2COONH4 → CO(NH2)2 + H2O

リン酸肥料の工業的製法

原油の脱硫工程で硫化水素を得る

原油中には硫黄化合物が含まれ、その濃度は硫黄分にして平均0.65wt%、中東原油は1wt%以上と言われています。精油所では原油の蒸留留分毎に脱硫装置をおき、硫化水素ガスとして製品中の硫黄分を回収しています。

H2 + RSH → RH + H2S (Rはアルキル基)

Claus反応によって硫化水素から硫黄を製造する

製油所から発生した硫化水素ガスは、Claus反応により硫黄の単体として回収されます。

第1工程はバーナーによる燃焼反応で、主に以下の2つの反応で原料中の1/3の硫化水素が二酸化硫黄になります。

2H2S + 3O2 → 2SO2 + 2H2O

4H2S + 2SO2 → 3S2 + 4H2O

第2工程はClaus反応で、残り2/3の硫化水素を二酸化硫黄と反応させて硫黄単体を製造します。

2H2S + SO2 → 3S + 2H2O

以上の反応式をまとめると、以下の反応式となります。

2H2S + O2 → 2S + 2H2O

接触法で硫黄から硫酸を製造する

硫酸は工業的には接触法で製造されます。接触法は以下の3ステップで行われます。

  1. 硫黄を燃焼させて二酸化硫黄を製造する
    S + O2 → SO2
  2. 二酸化硫黄を触媒を使用して三酸化硫黄に酸化する
    2SO2 + O2 → 2SO3
  3. 三酸化硫黄を濃硫酸に溶かして発煙硫酸とし、そこに希硫酸を加えることで濃硫酸を製造する
    SO3 + H2O → H2SO4

リン鉱石と硫酸からリン酸を製造する

リン酸肥料はリン鉱石を硫酸で処理して製造されます。この硫酸の原料となるのが硫黄です。

現代の硫黄の多くは、原油を精製する際の脱硫工程の副産物として得られます。

Ca3(PO4)2 + 3H2SO4 + 6H2O → 2H3PO4 + 3CaSO4・2H2O

中東以外から肥料を輸入できないのか?

中東がダメなら他の国から買えばいいじゃないかと思うかもしれませんが、それが難しいというのが現状です。ロシアや中国は世界的な肥料生産国ですが、どちらも輸出制限をかけて国内市場を優先させています。

各国の尿素輸出量に占める割合
出典:東京新聞

まとめ

この記事では、なぜ中東が肥料の輸出大国なのか、化学式を使って化学的に説明しました。

中東では窒素肥料を生産するためのメタンと、リン酸肥料をつくるための硫黄が大量かつ安価に生産されるため、中東は肥料の輸出大国となっています。

窒素肥料については、メタンを主成分とする天然ガスを出発原料として水素ガスを製造し、水素ガスと空気中の窒素からアンモニアを製造し、アンモニアをもとに各種窒素肥料が製造されます。

リン酸肥料については、原油の脱硫工程で得られる硫化水素を出発原料として硫黄を製造し、硫黄から硫酸を製造し、リン鉱石と硫酸を反応させてリン酸を製造し、リン酸をもとに各種リン酸肥料が製造されます。

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