化学実験をする際や化学工場での製造において、静電気は厄介で危険な現象です。
この記事では、静電気が発生する仕組みや、静電気の種類、静電気の発生のしやすさがわかる帯電列を説明します。また、化学実験で静電気が発生する状況や、静電気対策についても説明します。
静電気が発生する仕組み
物体の中にはプラスの電荷とマイナスの電荷があります。通常はプラスとマイナスの量が等しく、電気的に中性な状態です。
電気的に中性な2種類の異なる物体Aと物体Bがあるとします。これらを接触させると、片方の物体から相対的にマイナスに帯電しやすい物体へ電子が移動します。この状態から物体Aと物体Bを分離させると、物体Aはプラスに帯電し物体Bはマイナスに帯電し、静電気を帯びた状態が発生します。
このように、異なるふたつの物質を接触・分離させるだけで、必ず静電気が発生します。
静電気が発生する状況・静電気の種類
静電気が発生する状況はほかにもあり、摩擦、流動、スプレー放出、剥離、衝突、移し替え、沈殿、浮上、破砕などあらゆる状況で発生します。
見落としがちな静電気の発生状況として静電誘導があります。
静電誘導とは、電気を帯びている物体を導体に近づけると、導体の近い方に帯電体の電荷と異符号の電荷が、遠い方には同符号の電荷が生じる現象です。アースされていない導体では静電誘導による静電気が発生する可能性があります。
帯電列で静電気の発生のしやすさがわかる
2種類の物体間で摩擦などの運動が起こると静電気が発生するのですが、静電気の起きやすさは2種類の物体の組み合わせによって変化します。物体についてプラスまたはマイナスの電荷を帯びやすい傾向を経験的に並べた表を帯電列と言います。帯電列の位置が近い組み合わせでは静電気が起きにくく、位置が離れている組み合わせほど静電気が起きやすいです。
例えば、人毛とテフロンは帯電列で離れた位置にあるため静電気が発生しやすい組み合わせで、静電気が発生した場合は人毛がプラス、テフロンがマイナスに帯電します。
化学実験で静電気が発生しやすい状況
化学実験をする際に、静電気は厄介で危険な現象です。こんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。
- 粉体を天秤で計量している時に、スパチュラ、容器、粉体の間で静電気が発生し、天秤の数値が安定しない。
- 粉体が入ったポリ容器のふたを開けると、ポリ容器と粉体の間で静電気が発生し、粉体が舞い上がる。
- 溶媒がヘキサンやトルエンの時に勢いよく濾過すると、漏斗の壁面を溶媒が登ってくる。
静電気対策
静電気対策の基本は、導体へのアース、絶縁体の導電化+アースです。そして導電化できない絶縁体の静電気対策は、除電機(イオナイザー)が効果的です。
例えば少量のサンプルを秤量するときに静電気が発生すると、サンプルが飛び散ったり重量が正確に秤量できなかったりすることがあります。このような場合は除電機を使うと静電気を除去できて正確に秤量できるようになります。