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バイオディーゼル(FAME)の原料や製造方法を化学式で説明

バイオディーゼル 化学産業の話題
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ねこ
ねこ

バイオディーゼルとディーゼルって同じなの?

けむさん
けむさん

名前は似ているけど、化学的には違うものだよ

バイオディーゼルはバイオ燃料の一種で、FAME(Fatty Acid Methyl Ester、脂肪酸メチルエステル)とも呼ばれます。

バイオディーゼルの原料となる植物は大気中の二酸化炭素をもとに光合成によって生まれます。そのため、バイオディーゼルを使用して二酸化炭素を排出しても、全体を通して二酸化炭素は増えていない(カーボンニュートラル)とみなすことができます。

地球温暖化、気候変動問題を解決するための方法としてカーボンニュートラルなバイオディーゼルが注目されています。

バイオ燃料についてはこちらの記事もご覧ください。

この記事はこんな人におすすめ
  • バイオディーゼルを化学的に理解したい人

ディーゼルとバイオディーゼルとHVOの違い

通常のディーゼルは石油から製造される、主成分が炭素数10~20程度の飽和炭化水素です。石油由来のディーゼルは石油ディーゼルとも呼ばれます。

バイオディーゼルは、植物や動物の脂肪酸エステルを原料とする脂肪酸エステルです。主成分の炭素数は石油ディーゼルと同等の10~20程度です。生物由来の脂肪酸ため、バイオディーゼルには不飽和結合が含まれる成分があります。

HVOは、バイオディーゼルと同じ植物や動物の脂肪酸エステルを原料としていますが、水素化脱酸素化処理をして酸素を含まない飽和炭化水素にしています。つまり石油ディーゼルと化学的に同等です。

ディーゼルとバイオディーゼルとHVOの代表的な化学構造を示します。いずれも多種類の化合物の混合物ですが、ディーゼルとHVOは飽和炭化水素、バイオディーゼルは脂肪酸のメチルエステルで一部は不飽和結合のある脂肪酸も含まれています。

化学式
ディーゼルとバイオディーゼルとHVOの違い
バイオディーゼルとHVOの違い

バイオディーゼルの生産国

バイオディーゼルの生産量世界一はアメリカです。次にブラジル、中国、EUが続きます。世界と比較すると日本での生産量は少ないです。(出典:UFOP Report on Global Market Supply 2022/2023

バイオディーゼルの生産国

バイオディーゼルの製造方法

アルカリ溶液法によるバイオディーゼルの製造方法を紹介します。アルカリ溶液法では、トリグリセリド(植物油や動物油)を加水分解・エステル化してバイオディーゼルを製造します。

化学式
バイオディーゼルの製造方法
  1. 植物油や動物油中の異物や水分を除去します。
  2. KOH(またはNaOH)をメタノールに完全に溶解させます。
  3. 植物油や動物油を60℃程度に加熱し、(2)で準備したメタノールを加えて加熱撹拌して加水分解します。
  4. 加水分解反応後、下層に分離したグリセリンを含む溶液を除去します。(写真の黒い層)
  5. 温水で分液洗浄して、KOH(またはNaOH)、メタノールを除去します
  6. 減圧または加熱して脱水します。
  7. 濾過してバイオディーゼルが完成します。
バイオディーゼルのアルカリ溶液法
(出典:長崎県

現在はグリセリンの有効な利用方法が少ないですが、堆肥と混合したりボイラー燃料として利用したりする方法があります。

バイオディーゼルの原料

バイオディーゼルの原料のトリグリセリドは、植物油、動物油、廃油に含まれています。

バイオディーゼルの原料一覧

植物油や動物油には様々な脂肪酸が含まれています(参考:主な天然油脂の脂肪酸組成表)。この脂肪酸のメチルエステルが、バイオディーゼル(FAME)になります。

代表的な脂肪酸の化学構造を示します。炭素数が6の脂肪酸はC6、炭素数が8の脂肪酸はC8と表しています。

化学式
脂肪酸の種類

世界で生産されるバイオディーゼルの原料の内訳は以下の通りで、パーム油、大豆油、菜種油が多く使用されています。(出典:UFOP Report on Global Market Supply 2022/2023

バイオディーゼルの原料

バイオディーゼルの品質

原料の植物油や動物油はそれぞれ含まれる脂肪酸が異なるため、製造されるバイオディーゼル燃料の品質は原料により異なります。

製造したバイオディーゼルに、不飽和結合を含む脂肪酸が多い場合は酸化されやすくなり、長鎖脂肪酸が多い場合は低温で固まりやすくなります。

小規模でバイオディーゼルを製造すると原料により品質がばらつくため、大規模に製造するか、原料の品質をできるだけ一定にすることで品質を安定化させることができます。

バイオディーゼルの用途

バイオディーゼルは、トラック、重機、トラクター、発電機、ボイラーなどの燃料として使用することができます。純粋なバイオディーゼルは通常のディーゼルエンジンにはそのまま使用できませんので、バイオディーゼルは石油ディーゼルと混合して使用されます。

バイオディーゼルを混合した燃料は、混合比率によってB5(5%)、B10(10%)、B30(30%)などと表記します。

バイオディーゼルのメリット・デメリット

石油ディーゼルと比較した場合の、バイオディーゼルのメリットとデメリットをあげます。

メリット

  • カーボンニュートラルのため地球温暖化防止になる。
  • 廃棄する廃食用油からも製造できる。
  • 石油ディーゼルと混合すれば、従来のエンジンをそのまま使用できる。
  • ススや硫黄酸化物(SOx)の排出量が少ない。
  • 引火点が高く安全性が高い。
  • 生分解性があり環境に優しい。

デメリット

  • コストが高い。
  • 製造量が少ない。
  • 給油できる場所が限られる。
  • 窒素酸化物(NOx)の排出量が多い。
  • 対応していないエンジンの場合、メーカー保証が受けられなくなる。
  • 石油ディーゼルと比較してゴム素材に浸透しやすく、ゴムが膨張し軟化する場合がある。
  • 食用農作物を原料とする場合は、バイオディーゼルを生産した分だけ食糧生産が減少する。

まとめ

バイオディーゼル(FAME)について、石油ディーゼルとの違いや製造方法を化学式を使って説明しました。また、バイオディーゼルの原料、生産国、品質、用途、メリット・デメリットについても説明しました。

関連書籍

バイオ燃料関係の書籍を紹介します。

世界各国でカーボンニュートラル化の動きが加速する中、輸送部門におけるカーボンニュートラル化を進める上での「電動〔電気自動車(EV)〕化」「水素活用」に続く第3のアプローチとして「燃料のカーボンニュートラル化」が注目を集めています。本書では、バイオ燃料や合成燃料に代表されるこれらカーボンニュートラル燃料の現状と可能性をグローバルに見渡し、普及に向けた産業・企業レベルでの課題や解決の方向性について提言しています。

化石燃料であるガソリンに替わる燃料として注目度が増しているカーボンニュートラル燃料について、産業界の現状とこれからの普及に向けた技術開発の最新情報を図表を交えながらわかりやすく解説されています。最新のバイオ燃料について知りたい方、脱炭素実現に向けてカーボンニュートラル燃料の使用を検討している方におすすめです。

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