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カーボンリサイクル技術10種類と関連企業19社を紹介|CO₂を化学反応させて再利用

カーボンリサイクル 化学製品

この記事では、CO2を原料として有機化合物を製造するカーボンリサイクル技術の詳細と、関連する企業を紹介します。CO2を原料として有機化合物を製造することには、環境保護への貢献、資源の有効活用、循環型社会の実現、そして経済的な側面から重要な意義があります。

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カーボンリサイクルとは?

カーボンリサイクルとは、工場や発電所などから排出されるCO2(二酸化炭素)を資源として捉え、分離・回収して有用な化学品、燃料、コンクリートなどに再利用する技術です。

カーボンリサイクルの意義

CO2を原料として有機化合物を製造することには、環境保護への貢献、資源の有効活用、循環型社会の実現、そして経済的な側面から重要な意義があります。

環境保護への貢献

CO2を原料に有機化合物を製造することは、地球環境の保護に大きく貢献します。まず、CO2を化学的に新たな有機化合物に変換することで、大気中のCO2濃度を減少させます。これにより、気候変動問題の進行を緩やかにします。

資源の有効活用

工場や発電所から排出されるCO2は、従来は廃棄物として大気中に放出されていました。しかし、CO2を原料に有機化合物を製造する技術は、廃棄物であったCO2を有効活用することができます。

循環型社会の実現

CO2を原料に有機化合物を製造する技術は、有機化合物の製造に使用するはずであった化石燃料の使用量を抑制し、限りある資源を効率的に使うことができます。循環型社会の実現に向けて、CO2を再利用する技術には大きな意味があります。

経済的な利益

CO2を原料にした新しい製造プロセスは、新たな産業を創出します。さらに、今後はCO2排出量が少ない製品が優遇され、CO2排出量が多い製品にはペナルティが課せられることが予想されます。そのため、CO2を利用した製造技術は、環境保護だけでなく、経済的にもメリットがあります。

カーボンリサイクル技術と関連企業

CO₂からメタノール

CO₂と水素からメタノールを製造する研究は多くのグループでされており、様々な触媒が開発されています。その中で、商業生産やパイロット製造に進んだ事例をいくつか紹介します。メタノールはそのまま発電用燃料や輸送用燃料として利用したり、エチレンやプロピレンなど様々な化学品に変換される、有用な化学品です。

アイスランドのCarbon Recycling Internationalは、2012年に世界で初めてCO2からメタノールを生産するプラントを商業稼働しました。製造量は増加しており、2024年時点では年間31万トンのCO2から21.4万トンのメタノールを製造しています(Carbon Recycling Internationalホームページ)。

Carbon Recycling International
(出典:Carbon Recycling Internationalホームページ

三菱ガス化学は、新潟工場に既設のパイロットプラントを用いて、2021年にCO2と水素からメタノールを製造する実証実験を開始しました(三菱ガス化学ニュースリリース)。三菱ガス化学は2025年に実証実験を完了させ、2026年度に水島コンビナートで専用プラントを稼働させ、2030年までに商業化することを目指しています(三菱ガス化学カーボンニュートラル戦略説明会日経新聞)。

三菱ガス化学メタノール
(出典:三菱ガス化学ニュースリリース

住友化学は、島根大学が研究を進めてきた内部凝縮型反応器(Internal Condensation Reactor)に着目して共同開発を進め、2023年にCO2からメタノールを高効率に製造するパイロットプラントを愛媛工場に新設し、運転を開始しました(住友化学ニュースリリース)。住友化学は2028年までに実証試験を完了し、2030年代に事業化および他社へのライセンス供与を目指しています。

住友化学メタノールパイロットプラント
(出典:住友化学ニュースリリース

三井物産は、アメリカのCelanese Corporationと折半出資で設立したFairway Methanolの工場で、2024年にメタノールの製造を開始しました(三井物産トピックス)。Fairway Methanolでは周辺プラントから排出される産業由来のCO2を原料としています。最大で年間18万トンのCO2を有効利用してメタノールを年間13万トン製造します。

Fairway Methanol
(出典:三井物産トピックス

CO₂からオレフィン

IHIではCO₂を水素化してC2~C4オレフィンを生成する技術を開発しています(IHI技報)。オレフィンはポリマーや化学製品の重要な原料です。また、一般的にナフサの分解によって製造されるオレフィンをCO₂から製造することで、化石燃料由来の原料の使用量とCO₂を同時に削減する、環境に配慮した製造プロセスを実現できます。IHIはラボスケールで実証しているオレフィンの製造を、2024年度から2026年度までパイロットプラントで実証試験します(IHIプレスリリース)。

CO₂からオレフィン
(出典:IHI技報

CO₂からSAF

SAF(持続可能な航空燃料)にはいくつか種類があり、そのうちPTL(Power to Liquid)と呼ばれるものは、CO₂から製造されます。まずCO₂とH2からCOとH2Oを得る逆シフト反応でCOを製造します。このCOとH2からなる合成ガスをフィッシャー・トロプシュ反応で飽和炭化水素にし、蒸留してSAFやバイオナフサに分別します。この合成ガス法のうち、再生可能エネルギーで製造した水素を使用する場合は特にe-fuelと呼ばれます。(注:オリゴマーの化学式は化合物の一例を示しています。実際は多種類の炭化水素の混合物です。)

合成ガスプロセス

三菱重工業は、CO2および再生可能エネルギーから製造するカーボンリサイクル燃料e-fuelの日本市場への展開について、先進的な取り組みを実施しているアメリカのInfiniumと共同で検討していくこととし、MOUを締結しました(三菱重工業ニュースリリース)。Infiniumは、再生可能電力、水、CO2から独自の触媒を使用してe-fuelを製造しています(Infiniumホームページ)。

Infinium
(出典:Infiniumホームページ

CO₂からメタン

大阪ガスINPEXは共同で、CO2からメタンの製造の実用化を目指した技術開発事業を2021年より開始し、2023年からは世界最大級となる家庭用1万戸分に相当する400Nm3-CO2/hの試験設備の建設を進めています(大阪ガスプレスリリース)。2025年度中の試運転・運転開始を目指しています。INPEXは、2017年から長岡鉱場で合成メタン製造能力8Nm3-CO2/hでのCO2-メタネーション基盤技術開発を行っており、その経験を活かし、本事業全体の取りまとめや商業化検討、設備の建設を進めており、完成後の操業を担います。

CO₂からパラキシレン

千代田化工建設富山大学ハイケムは、CO₂からパラキシレンを製造することに成功しました(千代田化工建設プレスリリース)。千代田化工建設は2022年に子安リサーチパーク内にパイロットプラントを建設し、富山大学の研究成果をもとにハイケムで製造した触媒を使用して、パイロットプラントで施策を続けてきました。2023年にパラキシレンを含む試作品を従来技術で精製してパラキシレンを単離しました。

パラキシレンを酸化して得られるテレフタル酸は、エステル樹脂として衣料品、PETボトル、自動車シートなど幅広い分野で使用されます。このCO₂由来のパラキシレンを使用したエステル樹脂は、2024年のパリオリンピックのスポーツクライミングのユニフォームとして使用されました(ゴールドウインプレスリリース)。

CO₂からパラキシレン
(出典:千代田化工建設プレスリリース

CO₂からギ酸

日東電工エア・ウォーターは、日東電工が有するCO₂の化学変換技術を活用し、家畜ふん尿バイオマス由来のCO₂から牧草の保存に使用されるギ酸(HCOOH)を製造する取り組みを開始しました(日東電工ニュースリリース)。日東電工が開発する高活性触媒によりCO₂からギ酸を製造し、ギ酸は酪農地域でサイレージの添加剤などに利用されることで、CO2の有効利用による社会課題の解決と経済価値の創造を両立させます。

日東電工_エア・ウォーター_ギ酸
(出典:日東電工ニュースリリース

CO₂からカーボネート

カーボネートは、リチウムイオン電池電解液や、ポリカーボネート樹脂の原料として世界中で需要が高まっている化学品です。

旭化成は2002年に台湾の奇美実業との合弁企業である旭美化成において、世界で初めてCO₂からカーボネートを製造し、最終的にポリカーボネートを製造しました。その後、2024年までに5か国・地域6社に約90万トン相当の製造技術ライセンス供与を実施し、旭化成の製法を採用するプラントは世界全体の生産能力約600万トンの約16%を占めています(旭化成ニュースリリース)。

旭化成_CO2からカーボネート
(出典:旭化成技術ライセンス事業

産総研東ソーと共同で、CO2ジエチルカーボネートを効率的に合成する触媒技術を開発しました(産総研研究成果記事)。ジエチルカーボネートは、ポリカーボネートやポリウレタンの原料のほか、リチウムイオン電池の電解液、塗料や接着剤用の溶媒として幅広く活用されている有用で汎用的な化学品です。

CO2からジエチルカーボネート
(出典:産総研研究成果記事

CO₂からポリカーボネート

東北大学東京理科大学のグループは、CO₂とジオールを触媒的に直接重合させる技術を開発しました。開発した手法では、酸化セリウム触媒と 2-シアノピリジンを用い、CO₂と1,4-ブタンジオールを比較的温和な130℃で反応させることで、CO₂と1,4-ブタンジオールが交互重合したポリカーボネートが97%の高収率で得られました(Scientific Reports)。

CO₂からポリカーボネート

ポリカーボネートは、耐衝撃性、透明性、耐久性、耐紫外線性などの特徴を備えているため、建築材、医療機器、スポーツ用具など幅広い用途に使用されています。

CO₂からウレタン

産総研のグループは、CO₂とアミンからウレタンを製造する技術を開発しました。開発した手法では、ジアルキルスズジアルコキシド、チタンテトラアルコキシド、テトラアルキルシリケートのいずれかを用い、CO₂とアミンからウレタンを製造しました(オレオサイエンス)。ウレタンは熱分解してイソシアネートに変換すると、ウレタン樹脂の原料として利用できます。

CO₂から炭酸カルシウム

コンクリートは原料であるセメントを製造する際に大量のCO₂を発生します。そのため、セメントの量を減らして別の素材を使用することで、コンクリートの生産時に発生するCO₂を大きく減少させることができます。

大成建設日建工学は、セメントの一部をCO₂から製造した炭酸カルシウムに置き換える環境配慮コンクリート「T-eConcrete®」を開発しました(大成建設ニュースリリース)。

「T-eConcrete®」は現在徐々に実用化が進んでおり、大成建設の研究施設敷地内での舗装をはじめ、送電ケーブルなどの設備を設置する地中トンネルなど、インフラ構造物や建築物などさまざまな場所で使用され始めています(大成建設技術解説)。

大成建設カーボンリサイクルコンクリート
(出典:大成建設技術解説

まとめ

この記事では、CO2を原料として有機化合物を製造するカーボンリサイクル技術の詳細と、関連する企業を紹介しました。

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