こんにちは!けむさんです。
今回は、化学の実験や学習でよくある「溶液を水で薄めたら、pHはどう変わるの?」という疑問にお答えする記事です。
さらにこの記事では、酸性とアルカリ性のどちらにも対応したpH変化予測シミュレーターを付けています。誰でも簡単に実際の計算を体験できます。
化学の「なんとなく」を「なるほど!」に変える、知っておくと便利な内容です。
そもそも「pH」って何?
まずは基本から確認しておきましょう。
pHは、水溶液中の水素イオン(H⁺)または水酸化物イオン(OH⁻)の濃度を、対数で表した値です。
- 酸性 → H⁺が多い → pHは小さい(0〜6)
- 中性 → H⁺とOH⁻が等しい → pHはちょうど7
- アルカリ性 → OH⁻が多い → pHは大きい(8〜14)
pHの定義式は以下の通りです。
pH=−log10[H+]
アルカリの場合は、水のイオン積(Kw = 1.0×10−14)を使って
pH=14−log10[OH−] = 14 – pOH
という形で求めます。
なぜ水で薄めるとpHが変わるの?
酸や塩基の濃度を下げる(=水で薄める)と、当然ながらH⁺やOH⁻の濃度も下がります。すると pH(または pOH)の値が変わります。ただし、pHの値は対数(log)で計算するため、変化は直線的ではなくゆるやかです。
酸性の場合
- 0.1 mol/L のHCl → pH = 1
- 0.01 mol/L のHCl → pH = 2
- 0.001 mol/L のHCl → pH = 3
このように、10倍に薄めるたびに、pHは1増えます。
アルカリ性の場合
- 0.1 mol/L のNaOH → pOH = 1 → pH = 14 – pOH = 13
- 0.01 mol/L のNaOH → pOH = 2 → pH = 14 – pOH = 12
- 0.001 mol/L のNaOH → pOH = 3 → pH = 14 – pOH = 11
このように、10倍に薄めるたびに、pHは1減ります。
このような関係がわかると、実験の予測も非常にしやすくなります。
pH変化シミュレーター(酸・塩基モード切替式)
酸性でもアルカリ性でも使えるpH変化予測ツールです。
pH変化の計算方法
酸性の場合
例えば以下の塩酸を希釈する場合、
- 酸の種類:HCl
- 初期濃度:0.01 mol/L
- 初期体積:10 mL
- 希釈後体積:100 mL
希釈後濃度を計算 → 0.01 mol/L ÷ (100 ÷ 10) = 0.001 mol/L
→ pH = 3
アルカリ性の場合
例えば以下のNaOH水溶液を希釈する場合、
- 酸の種類:NaOH
- 初期濃度:0.05 mol/L
- 初期体積:20 mL
- 希釈後体積:200 mL
希釈後濃度を計算 → 0.05 mol/L ÷ (200 ÷ 20) = 0.005 mol/L
→ pOH = 2.30 → pH = 14 – pOH = 11.70
よくある質問とヒント
Q1. 濃度2倍にしたらpHも2倍になるの?
→ なりません。pHは対数(log10)で計算するので、10倍薄めると1変わるという関係です。
Q2. このツールは弱酸や緩衝液でも使える?
→ いいえ、使えません。このツールは、完全電離する強酸や強塩基(HCl、NaOHなど)を前提とした簡易シミュレーターです。酢酸やアンモニア、緩衝液がある場合などは正確にシミュレーションできません。
Q3. pHの最大値や最小値は?
→ 市販されているpHメーターで測定ができるpH範囲は、通常は、0から14までか、それよりも狭い範囲に限られます。 しかし理論上はpHに下限や上限は特には存在せず、負の値や14を超える値も取り得ます。ただし、濃度が高すぎたり、低すぎると正確な計算が難しくなる場合もあるので、濃度は10⁻⁶〜1 mol/L程度を推奨します。
まとめ
- pHは、酸・塩基の「濃度」と「希釈倍率」によって変わるが、その関係は対数的。
- 10倍に薄めると pH は1だけ増える(酸性の場合)
- 10倍に薄めると pH は1だけ減る(アルカリ性の場合)
- このツールでは、強酸性・強アルカリ性のpH変化を直感的に確認できる
- 弱酸性、弱アルカリ性、緩衝液が使用されている場合は別の計算が必要