PFASは免疫低下、甲状腺機能低下、肝疾患、脂質やインスリンの調節不全、腎臓病、生殖障害、発達障害、がんなどさまざまな健康への影響が明らかになっています。
この記事では、PFASの人体への摂取経路とPFASの浄化技術・PFAS対策について紹介します。
PFASとは?
PFASはフッ素を含む化合物で特徴的な撥水性や撥油性を有しており、1940年代から多くの身近な製品に使用されてきました。また、PFASは強く安定した炭素-フッ素(C-F)結合を持ち、物理的および化学的に安定であり、加水分解、光分解、微生物分解および代謝に対して耐性があるため、「Forever Chemicals(永遠の化学物質)」と呼ばれています。
しかしPFASはヒトや動植物に悪影響を及ぼすことがわかってきたため、世界各国で規制され始めました。
PFASのヒトへの摂取経路
大多数の人にとって、PFASに曝露される主な経路は食事です。
2020年に欧州食品安全機関(EFSA)は、魚肉、果物および果物製品、卵および卵製品が、PFOA、PFOS、PFHxSへの曝露の上位寄与カテゴリーであると公表しました。
各種文献でも、PFASに曝露される経路は食事が最も多く、その次に水道水や粉じんが多い傾向となっています。
食品を分析したところ、特に魚介類、藻類、肉類のPFOS、PFOS濃度が高いことがわかりました。このことから、魚介類、藻類、肉類にPFASが蓄積されやすいことがわかります。
食品群 | PFOS濃度(ppt) | PFOA濃度(ppt) |
穀類 | 0 | 0 |
いも類 | 0 | 0 |
砂糖・甘味料類 | 0 | 0 |
豆類 | 0 | 0 |
種実類 | 0 | 0 |
野菜類 | 0 | 0 |
果実類 | 0 | 0 |
きのこ類 | 0 | 0 |
藻類 | 5 | 36 |
魚介類 | 440 | 45 |
肉類 | 10 | 0 |
卵類 | 0 | 0 |
乳類 | 0 | 0 |
油脂類 | 0 | 0 |
菓子類 | 0 | 0 |
嗜好飲料類 | 0 | 0 |
調味料・香辛料類 | 0 | 0 |
飲料水 | 0 | 0 |
PFASの浄化技術
PFASは安定で分解されにくいですが、浄化する方法はあります。現実的な対策は、フィルターや活性炭等で吸着除去した後、吸着されたPFASを高温で焼却する方法です。
- 特定のフィルターによる除去
- 活性炭による吸着除去
- ハイドロタルサイトやアニオン性粘土鉱物などの層状複水酸化物による吸着除去
- 1000℃以上で焼却処理 [1]
- UV光照射による分解 [2][3]
- 金属ドープ光触媒による分解 [4][5]
- 生分解 [6]
- 脱炭酸分解 [7]
飲料水処理プラントの原水および飲料水中の10種類のPFASの濃度を測定した結果、原水から飲料水への水処理の過程でPFASの除去率は平均して30%程度でした。活性炭吸着工程ではPFASの総量の80%以上が除去されました。また、PFASのパーフルオロカーボン鎖長が長いほど除去効率が高いことがわかりました[8]。
個人でできるPFAS対策
PFASは活性炭吸着やフィルター濾過で除去できることがわかりました。
個人でできるPFAS対策として、活性炭やフィルターを使用した浄水器を使用して、体内にPFASを入れないようにしましょう。
関連書籍
文献
- [1] 環境省 PFOSおよびPFOA含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項
- [2] J. Hazardous Mater. 2020, 388, 121730 (https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2019.121730)
- [3] J. Hazardous Mater. 2021, 408, 124875 (https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2020.124875)
- [4] J. Hazardous Mater. 2021, 419, 126452 (https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2021.126452)
- [5] J. Hazardous Mater. 2021, 402, 123459 (https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2020.123459)
- [6] J. Hazardous Mater. 2018, 359, 241-247 (https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2018.07.048)
- [7] Science 2022, 377, 839-845 (https://doi.org/10.1126/science.abm8868)
- [8] J. Hazardous Mater. 2020, 400, 123235 (https://doi.org/10.1016/j.jhazmat.2020.123235)
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