G-B8ZBWWKGWV
PR

生分解性プラスチック5種類の化学式、特徴、製造メーカーを紹介

生分解性プラスチック バイオプラスチック

生分解性プラスチックは、微生物の酵素の働きや加水分解により化学結合が切断され、CO2と水にまで分解されるプラスチックです。この記事では、生分解性プラスチックの原料や製法、主な生分解性プラスチックの種類と生分解性レベルの違い、生分解性プラスチックの製造メーカーを紹介します。

スポンサーリンク

生分解性プラスチックとは?

生分解性プラスチックは、微生物の酵素の働きや加水分解により化学結合が切断され、CO2と水にまで分解されるプラスチックです。生分解性プラスチックはプラスチックの種類や形状、環境の温度、微生物の種類や量により、分解に要する期間が変わります。

生分解の概念図
(出典:産総研

生分解性プラスチックは、商品ライフサイクルが短いタイプの使い捨て製品や、自然環境中の使用が前提で、かつ回収が難しい製品などの用途に向いています。

下の写真は落葉堆肥中で生分解性プラスチックが分解される様子です。

落葉堆肥中での生分解性プラスチック
(出典:日本バイオプラスチック協会

生分解性プラスチックの原料・製法

生分解性プラスチックには原料や製法に特に制限はありません。石油を原料にした生分解性プラスチックもあります。生分解性プラスチックは原料や製造方法によって4つに分類できます。

方法概要
微生物抽出法・特定の微生物が作り出した化学物質を精製してプラスチックとして利用する方法
天然物発酵法・トウモロコシやサトウキビなどの植物から抽出した成分を発酵させて得られるエタノールを中間原料として、プラスチックを製造する方法
天然物化学合成法・糖や油脂などの植物原料から抽出した化学物質をもとにプラスチックを製造する方法
・動植物から得た油脂を原料としてバイオナフサを製造し、プラスチックなどを製造する方法 (どちらも、詳細は別記事「バイオ燃料」をご覧ください)
石油化学合成法・石油を原料として化学合成する方法

生分解性プラスチックの生分解性レベル

生分解性プラスチックは種類によって分解のしやすさに差があります。以下の指標では、下に行くほど微生物が少ない環境となり分解の難易度が高くなります。

生分解性レベル生分解条件代表的な生分解性プラスチック
1大規模コンポスト設備(高温多湿)で分解できるもの・ポリ乳酸(PLA)
2家庭用の簡易なコンポスト機で分解できるもの
3土に埋めて分解できるもの・ポリブチレンサクシネート(PBS)
4川などの淡水環境で分解できるもの
5海などの海水環境で分解できるもの・ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
・3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体(PHBH)
・酢酸セルロース
・ポリカプロラクトン(PCL)

生分解性プラスチックと言っても、どのような条件でも分解されるわけではありません。PLAのように高温高湿条件でなければ分解しないプラスチックは、海洋では分解されません。どのような条件で生分解するのかという情報を正確に伝えなければ、分解されない環境へ排出される懸念があります。

海洋プラスチックごみ問題やマイクロプラスチック問題に対しては、基本的にはゴミの分別廃棄と回収を第一に考えるべきですが、やむをえず自然環境中に流出する場合は生分解性プラスチックが解決策になります。この場合でも、排出される条件で分解する生分解性プラスチックを使用する必要があります。

やむをえず自然環境中に排出されるプラスチックの例

  • 漁業関連(漁網、釣り糸、ブイ、トロール網、フロート)
  • 農業関連(マルチフィルム、温室用ビニールカバー、育苗用トレイ)
  • スポーツ・アウトドア(登山用ロープ、カヤックやカヌーのボート、スポーツ用ボール、ビーチボールや浮き輪)
  • 家庭用品(靴底、人工芝)
  • 自動車・交通(タイヤ)

主な生分解性プラスチック

主な生分解性プラスチックを紹介します。

生分解性プラスチック主な原料生分解性レベル主なメーカー
ポリ乳酸バイオマス由来の乳酸1NatureWorks(アメリカ)
Total Corbion PLA(オランダ)
Zhejian Hisun Biomaterials(中国)
ポリブチレンサクシネートバイオマス由来のコハク酸3PTT MCC Biochem(タイ)
ポリヒドロキシアルカン酸糖や植物油5Newlight Technologies(アメリカ)
Danimer Scientific(アメリカ)
Tianan Biologic Material(中国)
カネカ
ポリカプロラクトン石油由来5ダイセル
Ingevity(イギリス)
Shenzhen Esun Industrial(中国)
BASF(ドイツ)

世界のバイオプラスチックの生産能力は上昇傾向にあります。nova InstituteとSustainable Plasticsによると、バイオプラスチック(生分解性プラスチック+バイオマスプラスチック)の生産能力は2022年の約223万トンから2027年には約630万トンへと大幅に増加する見込みです。中でも、PLAやPHAの伸びが大きいと予想されています。

バイオプラスチックのシェア
(出典:Sustainable Plastics

ポリ乳酸(PLA)

生分解性プラスチックでもありバイオマスプラスチックでもあるPLAは世界的にも比較的流通量の多いプラスチックです。PLAは強度が高く、食品容器や家電部品など用途が広がっています。

PLAは、トウモロコシ等のデンプン作物やサトウキビ等の糖作物等を糖化・発酵して得られる乳酸を重合して製造します。PLAの主な用途は、食品容器、繊維、農業用資材です。

PLA
PLA

ポリブチレンサクシネート(PBS)

PBSは、2段階で製造します。まずコハク酸と1,4-ブタンジオールを重合してPBSオリゴマーを製造します。次に、PBSオリゴマーを減圧下でエステル交換して高分子量化してPBSを製造します。

PBSの物性はポリエチレンに似ているため、ポリエチレンからの置き換え需要が期待されています。

PBS
PBS

ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)

PHAは、糖や脂質を微生物が発酵させることによって生成するポリエステルです。

PHAの工業的製造方法は、糖や脂質、グリセリンを微生物に発酵させ、微生物からポリエステルを抽出・精製します。原料のグリセリンはバイオディーゼルFAMEの副産物が利用可能です。

PHAの主な用途は、食器類、農業用資材です。

PHA
PHA

PHBH

PHBHは、3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート重合体です。ポリヒドロキシアルカン酸の一種です。

PHBH
PHBH

ポリカプロラクトン(PCL)

PCLは、石油由来の原料から合成される生分解性プラスチックのひとつです。

低融点や熱可塑性プラスチックとしての特性を生かし、農業用マルチフィルムやコンポスト用袋、また塗料や繊維としても使用されています。

PCL
PCL

生分解性プラスチックのメリット・デメリット

生分解性プラスチック限定的な条件の下でメリットがあります。一方で品質面では石油由来の従来のプラスチックに劣ります。

メリット

  • 再生可能なバイオマスから製造されるタイプの生分解性プラスチックは、製造時に石油の使用量を抑制できる
  • リサイクルせず廃棄された場合、自然環境で分解する生分解性プラスチックはプラスチックゴミ問題を抑制できる
  • ロゴマーク付きの製品を作る場合、地球に優しい企業であることをアピールできる

デメリット

  • 一般的なプラスチック製品と比較して価格が高い
  • 分解されるため、長期間使うような製品には向かない
  • 分解されるため、製品としての強度は強くない
  • 使い捨てが前提となるため、リサイクルやリユースに向かない
  • 置かれている環境の微生物の種類や数によっては、分解されにくい
  • プラスチックの種類によっては高温加湿条件にしなければ分解しない(PLAなど)

生分解性プラ識別表示制度

日本バイオプラスチック協会によって生分解性プラ識別表示制度が実施されています。なお、生分解性プラの中で、さらに日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラ識別表示基準を満たす製品は、「生分解性バイオマスプラ」の名称とマークの使用が認められています。

生分解性プラ識別表示制度

関連書籍

2050年には魚の量をプラスチックごみの量が上回るという報告がなされ、深刻な課題となっている海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック問題。現在、プラスチックの使用量の削減および、プラスチック代替技術の研究開発や海洋生分解性を有する新素材開発が求められています。そこで、本書「最新の海洋生分解性プラスチックの研究開発動向」では、海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック問題についての日本と世界の取組みの現状や、最新の技術研究について、わかりやすく解説します。これからのSDGsを目指す社会をつくる、すべての企業や研究者に読んでほしい一冊です。

「図解でわかる 14歳からのプラスチックと環境問題」は、イラストが多く、視覚的に理解しやすい工夫がされています。14歳からというタイトルですが、大人でも十分読みごたえがある本です。プラスチック問題の深刻さと急いで対策を講じる必要性を強調しています。

タイトルとURLをコピーしました