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実験室と工場での化学合成の違い|製造設備と原料の違いについて説明

スケールアップ(アイキャッチ) プロセス化学

実験室ではガラス器具を使用して化学合成しますが、工場ではステンレスなど金属製の製造設備を使用して化学合成します。また、実験室では試薬原料を使用し、工場では工業用原料を使用します。この記事では、実験室での化学合成と工場での化学合成の違いを説明します。

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製造設備の違い

実験室での化学合成と工場での化学合成において、設備の違いを説明します。この記事では、バッチ生産を想定しています。

反応工程や精製工程の各種類について、実験室で使用する設備と工場で使用する器具を対比して説明します。実験室では通常ガラス製の器具を使用しますが、工場設備の材質はガラス、ステンレス、ハステロイ、フッ素樹脂など様々あります。酸性条件で使用する設備はステンレスを避ける、塩基性条件で使用する設備はガラスを避けるなど、使用する工程に適した材質を選びます。

また、工場設備は生産数量に合わせてサイズを変えます。小さいものは100L程度から大きいものは10,000Lを超えるサイズまであり、適切なサイズを選びます。

反応

原料や溶媒を仕込んで反応させる工程です。

実験室ではセパラブルフラスコや三ツ口フラスコなどを使用します。工場では下に示すような反応器を使用します。

実験室

反応器(実験室)
出典:東京硝子器械

工場

反応器(工場)
出典:神鋼環境ソリューション

分液

製品を含む有機溶媒と水を混合後静置して有機溶媒層と水層に分離させ、水層を廃棄します。水溶性の不純物を除去する精製工程です。

実験室では分液ロートなどを使用します。工場では下に示すような反応器と同じ設備を使用します。

実験室

分液ロート(実験室)
出典:東京硝子器械

工場

反応器(工場)
出典:神鋼環境ソリューション

晶析(再沈殿)

製品を含む有機溶媒と製品の貧溶媒を混合して製品を固体で析出させます。貧溶媒への溶解性のある不純物を除去する精製工程です。

実験室ではセパラブルフラスコや三ツ口フラスコなど反応器と同じ器具を使用します。工場では下に示すような反応器と同じ設備を使用します。

実験室

反応器(実験室)
出典:東京硝子器械

工場

反応器(工場)
出典:神鋼環境ソリューション

濾過

固体と液体の混合物(スラリー)を固体と液体に分離する精製工程です。

実験室ではガラス製や陶器製の濾過器を使用します。フィルターには紙製の濾紙がよく使用されます。工場では下に示すような濾過器を使用します。上の写真は回転させて遠心分離の力を利用して濾過をする遠心分離機です。下の写真は加圧しながら給液して濾過する加圧濾過器です。どちらもフィルターには布製の濾布がよく使用されます。

実験室

濾過器(実験室)
出典:桐山製作所、アズワン

工場

遠心濾過器(工場)
出典:松本機械
濾過器(工場)
出典:日本化学機械製造

カラム

製品を含む有機溶媒を吸着材に通液させ、吸着材への吸着力の差を利用して不純物を分離する精製工程です。

実験室ではガラス製のカラム管に吸着材を充填して使用します。吸着材はシリカゲルなどが使用されます。工場では下に示すような濾過器に吸着材を充填して使用します。ただしカラム精製はコストがかかる精製方法のため、基本的に工場でカラム精製は避けるプロセスを選びます。

実験室

カラム(実験室)
出典:柴田科学

工場

濾過器(工場)
出典:日本化学機械製造

蒸留

製品を含む有機溶媒を減圧や加熱して沸騰させ、沸点の差を利用する精製工程です。製品より沸点の低い不純物を除去することができます。水と有機溶媒を共沸させて水を除去することもできます。沸点の差を利用して複数の製品を得ることもできます。

実験室ではフラスコ、連結管、冷却管、受けフラスコのセットを使用します。工場では下に示すような背の高い蒸留塔を使用します。

実験室

蒸留(実験室)
出典:アズワン

工場

蒸留塔(工場)
出典:石油化学工業協会

乾燥

水や有機溶媒を含む製品を減圧や加熱して、水や有機溶媒を除去する精製工程です。

実験室では下に示すような恒温槽で乾燥させます。工場では棚段乾燥機やコニカル乾燥機を使用します。棚段乾燥機は乾燥前品を薄いトレイに載せて乾燥機にセットして乾燥させます。コニカル乾燥機は乾燥前品を充填して回転させながら乾燥させます。

実験室

乾燥器(実験室)
出典:アズワン

工場

乾燥器(工場)
出典:日向製作所、GL HAKKO

原料の違い

実験室での化学合成と工場での化学合成において、設備の違いを説明します。

実験室では小スケールのため、試薬メーカーから試薬を購入して使用することが多いです。工場と隣接している研究所では、工場で使用している原料を一部抜き取って使用することもあります。

工場では大スケールのため大きな容器で購入します。固体の原料は、紙袋やファイバードラム、フレキシブルコンテナの形態で購入します。液体の原料は、ドラム缶やタンクローリーで購入します。

試薬原料と工業用原料

まとめ

この記事では、実験室での化学合成と工場での化学合成の違い、特に製造設備と原料の違いについて説明しました。



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